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講談社BOOK倶楽部「今日のおすすめ」野中幸宏選01

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講談社BOOK倶楽部&講談社コミックプラス「今日のおすすめ」に掲載された野中幸宏のブックレビューをまとめています。
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記事一覧

【選挙の前に】18歳になったら「見えない権力」を自覚せよ!|『はじめての政治哲学──「正しさ」をめぐる23の問い』(小川仁志)

【選挙の前に】18歳になったら「見えない権力」を自覚せよ!|『はじめての政治哲学──「正しさ」をめぐる23の問い』(小川仁志)



改正公職選挙法が施行され、18歳から選挙権が行使することができるようになりました。これで240万人の有権者が新しく投票行動ができるようになります。その一方で、いくつかの高校では“政治活動”をおこなう際には学校に届けることを義務づけているようです。

そして新有権者へ行われている“教育”とは、たとえば正しい投票行動であるとか、正しい政治活動のあり方というもののようです。なんとなく納得させられそう

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【日本宿便社会の元凶】安倍総理含め、“カエル男”を一掃せよ!|『日本の社会を埋め尽くすカエル男の末路』(深尾葉子)

【日本宿便社会の元凶】安倍総理含め、“カエル男”を一掃せよ!|『日本の社会を埋め尽くすカエル男の末路』(深尾葉子)



「やられたらやり返す……八つ当たりだ!」

大ヒットドラマ『半沢直樹』の決めぜりふ「やられたらやり返す、倍返しだ!」のパロディのようですが、これはパロディのセリフではありません。日本社会を息苦しくさせている画一的とも思える幸福を追い求めるという「タガメ女・カエル男システム」に取り込まれ、そのことに自覚しない「カエル男」の一種、「攻撃型カエル男」の行動(言動)パターンなのだそうです。(このシステ

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【惨劇】ムルアカさん、殺人道路に激怒──アフリカを喰う中国人!|『中国が喰いモノにするアフリカを日本が救う 200兆円市場のラストフロンティアで儲ける』(ムウェテ・ムルアカ)

【惨劇】ムルアカさん、殺人道路に激怒──アフリカを喰う中国人!|『中国が喰いモノにするアフリカを日本が救う 200兆円市場のラストフロンティアで儲ける』(ムウェテ・ムルアカ)



57ヵ国が創設メンバーとなって設立された中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)にはこの後もアフリカ、中近東の国々の参加が予定されており、今年年末までに100ヵ国を越える見通しが出てきたそうです。(ちなみにアジア開発銀行への参加国は67ヵ国です)

アフリカへの中国の進出はニュースでときおり取り上げられることはありました。けれど日本にとってアフリカはまだ遠い国なのでしょうか、中国がどのよう

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『家栽の人』遺言──佐世保同級生殺害事件、加害者への手紙|『「家栽の人」から君への遺言 佐世保高一同級生殺害事件と少年法』(毛利甚八)

『家栽の人』遺言──佐世保同級生殺害事件、加害者への手紙|『「家栽の人」から君への遺言 佐世保高一同級生殺害事件と少年法』(毛利甚八)



家庭裁判所の裁判官、桑田義雄を主人公としたコミック『家栽の人』の原作者、毛利さんの絶筆となったドキュメントとエッセイです。自らの死を見つめながら最後の最後まで少年犯罪と向き合った毛利さんの思いと情熱がページのいたるところから感じられます。

少年事件や家事審判を扱う家庭裁判所を背景にした『家栽の人』はテレビドラマにもなり、ご存知のかたが多いと思います。人情味と時に厳しい桑田の姿に憧れ法曹界への

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これは犯罪だ! 合理性を追求する経済学の罠──我々はなぜ騙されるのか?|『経済学の犯罪 稀少性の経済から過剰性の経済へ』(佐伯啓思)

これは犯罪だ! 合理性を追求する経済学の罠──我々はなぜ騙されるのか?|『経済学の犯罪 稀少性の経済から過剰性の経済へ』(佐伯啓思)



まずこれを読んでください。

──「自由貿易が国民全体に大きな利益をもたらすことは、アダム・スミスの『国富論』以来、世界が経験してきた共有の理解だ。日本自身これまで、自由貿易で最も大きな利益を得てきた国のひとつといえる」。だからTPPに反対するなど論外である。──

上記は『産経新聞』に寄せた竹中平蔵氏の論説の一部です。さて、これは“常識”なのでしょうか。佐伯さんの問いかけはここから始まります

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秀吉と家康、世界に「日本国王」と認められたのはどちらか?|『天下統一 秀吉から家康へ』(黒嶋敏)

秀吉と家康、世界に「日本国王」と認められたのはどちらか?|『天下統一 秀吉から家康へ』(黒嶋敏)



豊臣秀吉というと微賤な境遇から身を起こし、非命に倒れた織田信長の意思を継いで天下統一を成し遂げた英傑であり、天下一の果報者ともいわれています。今でも“太閤”という名で親しまれ、豊臣秀頼の横死もあり一代の悲劇の英雄とも思われています。失政は朝鮮出兵(唐入り)で、これは秀吉の耄碌(もうろく)や世継ぎの死が重なり、無謀な戦にでたものだといわれています。

この本はそのような先入観(=太閤伝説)をひと

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【黒歴史】女性蔑視の中、OL(職業婦人)はどのように定着したか|『OL誕生物語 タイピストたちの憂愁』(原克)

【黒歴史】女性蔑視の中、OL(職業婦人)はどのように定着したか|『OL誕生物語 タイピストたちの憂愁』(原克)



NHKで放送中のテレビ小説『とと姉ちゃん』で、主人公が家族のためにと就いた仕事がタイピストでした。職業婦人の憧れであり、高給取りの職業としてドラマで取り上げられていました。では、この職業婦人の花形、タイピストたちは実際はどのような職場環境で仕事をしていたのでしょうか……。この本は当時の雑誌記事を中心にタイピストたちの実態を描き出したものです。

原さんは小説風のしつらえを使い、彼女たちの世界を

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【悲報】中国人のマナーや爆買いは、千年不変の国民性だった……|『爆買い中国人は なぜうっとうしいのか』(陽陽)

【悲報】中国人のマナーや爆買いは、千年不変の国民性だった……|『爆買い中国人は なぜうっとうしいのか』(陽陽)



──外国人旅行者が昨年日本で使ったお金は約3兆4771億円と、半導体など電子部品(約3兆6000億円)、自動車部品(約3兆4000億円)の日本の輸出額に匹敵し、まさに日本経済を支えているといっても過言ではない。そして、その4割超を占めるのが中国人だ。──(毎日新聞 2016年2月4日 【爆買い 中国人はなぜ? 理由は「命」と「カネ」】より)

流行語大賞にもなった「爆買い」が、「日本経済を支え

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今でも使われる「同性愛診断法」──偏見と迫害の黒歴史|『同性愛は「病気」なの? 僕たちを振り分けた世界の「同性愛診断法」クロニクル』(牧村朝子)

今でも使われる「同性愛診断法」──偏見と迫害の黒歴史|『同性愛は「病気」なの? 僕たちを振り分けた世界の「同性愛診断法」クロニクル』(牧村朝子)



──本来、人間は、ひとりひとり違います。だからこそ、なにかしらの共通点を探し、「同じ仲間」だと認識するための名前をつけるわけです。そうして「自分と同じ仲間」が誰なのかという線を引くことによって、必然的に「自分と違うやつら」の存在も立ち現れてきます。

だけれどもその線というのは、もともと引かれているものではなくて、言葉によって引かれたものであるわけです。人が人を「同じ同性愛者の仲間」と呼ぶのは

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ごく普通の暇人が、過激な“愛国”ヘイトスピーチに走る理由|『ネットと愛国』(安田浩一)

ごく普通の暇人が、過激な“愛国”ヘイトスピーチに走る理由|『ネットと愛国』(安田浩一)



先月、ヘイトスピーチ対策法が成立しました。この法は防止に向けた啓発活動や、被害者向けの相談体制の拡充などが中心で罰則はありません。この法でどれくらいヘイトスピーチがなくなるのかはこれからの課題だと思います。またその一方で自分と異なる意見、感想を持つ人の揚げ足をとってヘイトスピーチと決めつけるような誤解があります。そのような典型的な誤解例が、この本の文庫版あとがきで記されていますので読んで欲しい

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15歳でがんの早期発見を発明した「天才少年」の成長曲線|『ぼくは科学の力で世界を変えることに決めた』(ジャック・アンドレイカ マシュー・リシアック  訳=中里京子)

15歳でがんの早期発見を発明した「天才少年」の成長曲線|『ぼくは科学の力で世界を変えることに決めた』(ジャック・アンドレイカ マシュー・リシアック  訳=中里京子)



この本は15歳にして膵臓・卵巣・肺がんを早期発見できる検査法を発明した天才的少年の自伝です。少年の名はジャック・ローマス・アンドレイカ、1997年に生まれ、カーボンナノチューブと腫瘍マーカーとしてメソテリンを利用し、がんを早期発見するという研究で2012年にインテルのゴードン・E・ ムーア賞(ISEF)を受賞、大きな話題を集めました。

天才少年ジャックはどう育てられたのでしょうか……。
麻酔

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【最後の秘書が語る】田中角栄は、結局何が凄かったのか?|『角栄の「遺言」 「田中軍団」最後の秘書 朝賀昭』(中澤雄大)

【最後の秘書が語る】田中角栄は、結局何が凄かったのか?|『角栄の「遺言」 「田中軍団」最後の秘書 朝賀昭』(中澤雄大)



“コンピュータ付きブルドーザー”“今太閤”“金権政治家”“巨悪”“闇将軍”、はては“永田町のカサノバ”までさまざまな異名(あだ名)で呼ばれた田中角栄、戦後最大の政治家として今でもことあるごとに名前がとりざたされています。彼についての書籍も批判的なもの、肯定的=待望論、評価の見直しを迫るものなど数多く出版されています。最近でも石原慎太郎の『天才』が話題になりました。

石原慎太郎といえばロッキー

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【悲報】日本の経済施策は、なぜぐるぐる繰り返すのか?|『2020年 世界経済の勝者と敗者』(ポール・クルーグマン 浜田宏一)

【悲報】日本の経済施策は、なぜぐるぐる繰り返すのか?|『2020年 世界経済の勝者と敗者』(ポール・クルーグマン 浜田宏一)



ノーベル経済学賞受賞者クルーグマン氏と、安倍政権の有力なブレーン浜田宏一氏が現代経済の問題点を縦横に話した興味深い対談(というか、相互講義のようにも思えるもの)です。

この本でふたりの違いが最も出ているのはTPPに対しての考え方でした。
「貿易や投資の自由化は、世界全体の経済を向上させられる」とTPPに賛成する浜田氏に対して、クルーグマン氏は自ら「どっちつかずの反対者」といい、こう述べていま

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『裁かれた命 死刑囚から届いた手紙』(堀川惠子)

『裁かれた命 死刑囚から届いた手紙』(堀川惠子)



ある日、検察官のもとに1通の手紙が届きました。それは彼が捜査検事時代に取り調べた男・長谷川武からのものでした。強盗殺人容疑で取り調べをうけた彼は検事に進んで自白し、罪を認めました。そして検事は死刑を妥当として取り調べを終えます。検事が求刑したとおり、彼は1審で死刑判決がくだされ、控訴、上告と裁判が続けられましたが、死刑が確定します。(のちに執行されました)

この長谷川からの手紙には検事・土本

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