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『終わらない歌』(宮下奈都 実業之日本社)





足元から震えがのぼってくる。
あぁ、気が狂いそう。やさしいうたが好きで。

この作品に込められた力強いエール。途切れず紡がれる勇気の歌。

大人になっていつの間にか、しょうがないんだ、これが大人なんだから、ここで頑張るしかないんだからとただ歯を食いしばるだけで、泣きそうになっても見ないふりしてやり過ごした。

なのに宮下奈都は、また聞かせてくれる。

人にやさしくしてもらえないんだねと。いつだって、本の中から、がんばれって言うのだと。


ここにあるのは、相克する自分を脱ぎ捨てて、未来へ飛び出そうとする少女達の物語だ。しかし、単なる青春小説ではない。

読者とともに、「終わらない歌」を歌おうとする温かくどこか壮大な何かだ。

一つ一つ語られる、前作『よろこびの歌』に登場した少女達の後日談が、乾いてささくれた、大人ぶった心の花瓶に、少しずつ水をくれる。

そして最後に、一緒に歌おうと呼びかけるのだ。

歌は終わらない、まだ繋がっていくだろうと。あのときの未来にいる自分がまた、これから先の未来へ向かって歌うんだろうと。

挫折や絶望がすぐそこにあるからといって、辿り着けない場所に夢があるからといって、自分に期待しない理由になんてならない。

重くて厳しいものだと知っていてもなお、私達は希望を抱く。

そのための震えるような勇気を、きっと持っているのだと信じる。この作品が、信じようよと歌ってる。

宮下奈都最高。


(2012年の衝動的な感想文より)
『終わらない歌』(宮下奈都 実業之日本社)


みんなで歌って動画を作ったね。懐かしいです。

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