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地域ボランティア活動に若者が参加してくれない問題を、彼らを取り巻く労働環境から考える

 よく「もっと若者に地域ボランティア活動に参加してほしい」という声を耳にします。地域団体に関わると、二言目には聞くような声です。資本主義社会に生きる我々は大抵の場合、労働することで対価を得て資本を形成する、ということを生活の軸に置いている、というか、置かざるを得ないわけですが、そうすると、労働時間に対して対価の発生しないボランティア活動というものは、基本的には余剰資本を使って行う余暇、消費行動の一種であるとみなすことができます。

 そんな消費行動に地域組織が支えられているという側面を踏まえるなら、へとへとになって動けないのではなく、いきいきと地域で動ける余暇を過ごせるくらいには、労働環境も豊かであってほしいと願うばかりですよね。

 では、現在の若者は自身の労働環境をどう理解しているのか。この問について考えるため、磯部一恵他『組織の変遷から見る日本における若者の雇用の現状と課題』を読みました。面白かったです。

 本論文では、厚生労働省の報告が紹介されています。これによると、新規高卒就職者の約4割、新規大卒就職者の約 3 割が、就職後 3 年以内に離職しているそうです。また、若者の転職行動の国際比較を行った先行研究からは、日本以外の国では、「賃金への不満」が大きな退職理由になっている一方、日本では退職理由の 1 番目は「労働条件や勤務地への不満」、2 番目が「仕事内容への不満」が転職理由として挙げられていることが明らかになっていると紹介しています。つまり、お金の問題ではなく、働き方に問題がありそうだ、というんですね。

 さらに、労働政策研究・研修機構が行った調査によると、「初めての正社員勤務先を離職した理由」は、男女とも上位5つに入る離職理由として「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかったため(男性 31.8%、女性28.7%)」「肉体的・精神的に健康を損ねたため(男性 26.9%、女性29.3%)」となっていることが明らかになっているそうです。

 こうしてみると、現在の企業体の労働慣行と、若者の労働観との間にずれがあるようだといえそうです。

 しかし、現在の日本の若者の雇用について、組織の変遷及び形態の観点から課題を考察した論文はないのだとか。そこで本論文では、何が問題なのか、様々な先行研究を参考に考察しています。

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