３年程前 僕は色々な楽器を探し集めていた

ピカピカの綺麗な楽器ではなく、使い古された楽器
壊れて 音なんて出なくてもいい
とにかく なんだか寂しそうにしている楽器を集めていた

G線のない埃被ったコントラバス
ピストンを一度押すと戻ってこない錆びすぎたトランペット
素人の僕が見ても部品なさすぎ とツッコミを入れたくなるサックス
鍵盤もガタガタで蛇腹もひび割れていたアコーディオン
実家に転がっていたフォークギター
どこかの幼稚園で使われていた古いタンバリン
テールピースがグラグラで弦が張れないバンジョー
とにかく色々と・・・

そんな楽器集めの最中でひとつのホルンを譲ってもらった

町外れの古びた楽器屋さんなのか、楽器教室なのか…
お世辞にも綺麗とは言えないショーウインド（ガラスの引き戸）から覗いていた雰囲気のあるホルン。

通りすがる度に気になっていて（欲しくなって）
意を決してチャイムを押して直談判

僕「あの飾りっぱなしのホルン譲ってもらえませんか？」

お店のおじさん「あれはダメよ、イタリアのいいやつだし、修理してまた使うので」

僕「でも何年もあのままですよね？てか僕が言うまであそこに置いてたの忘れてたでしょ笑」

お店のおじさん「いやいや大事に飾ってますよ  吹きたいの？」

僕「埃かぶって倒れてますよ 大事なホルン。ホルンは吹きません」

お店のおじさん「えっ？じゃあ何に使うの？」

みたいなやりとりをして、想いを伝えて...
そこまで言うならと渋々譲ってもらえた思い出のホルン

その後、無事に役目を全うしてくれたホルン

因みにどんな使い方をしているのかを見てもらいたくて招待したけど
普通に来てくれなかったおじさん・・・笑

あれから３年
おじさん元気にしているだろうかと思い出し、あの時はありがとうございました、今でもこんな使い方してますよの報告とお礼を込めて

あのショーウインドに飾ってもらおう・・・

そして、今度は

３年前のあの日から１ミリも動かず埃被ってそのまま鎮座しておられる古びたトロンボーンを譲ってもらおう

そして お店のおじさんはまたあの時と同じように

「あれはダメよ、直してまた使うし 大事だから」

と 言うのでしょう。

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