見出し画像

顕著な地震と観測

こんばんは、nooooon(@nooooon_met)です。


令和6年能登半島地震の発生から、間もなく1か月が経過しようとしています。

顕著な地震の発生時には、地震の揺れの強さを表す震度や、海岸における津波の高さが注目されると思います。このような指標は、震度計や津波観測計等によって、定量的に観測されています。
しかし、今回の地震では、このような観測機器に様々な影響が生じたほか、観測データの取り扱いについても一部疑義が生じる事態となりました。

この記事では、それらに関する情報について、気象庁の報道発表からピックアップしてまとめたいと思います。



1.震度速報の誤り

令和6年1月1日23時3分ころに、最大震度3の地震が発生しました。しかし、この地震の発生直後(23時5分)に発表された震度速報は、「最大震度7の地震が発生した」旨を記述する誤った情報となっていました。結局、この情報発表から9分後の23時14分に震源・震度情報が発表され、正しい最大震度が示される状況となりました。

この時のことを私はよく覚えていて、「また震度7!?」と驚きつつも「16時台に同震度の地震が起きたときは(自分が住んでいる)この辺りでも揺れてたけど・・・今回は揺れないし、何か変だな?」と感じました。少し時間が経ってから震度が訂正され、やっぱりそうか・・・となりました。

情報作成の特性から、緊急地震速報で過大な震度が予測された事例は、これまでにも何度か発生したことがありました。


しかし、震度速報でこのような事例が発生したというのは、覚えがありません。発生当初は原因が分からない状況でしたが、その後の調査により、情報作成・発表のために使用されているシステムのメモリ上に残っていた過去の情報が、意図せず引用されてしまったためだったそうです。すでに再発防止策は講じられたようで、それによる副作用的なものもほぼ無いようなので、ひとまず今後は発生しないものと思われます


2.津波観測地点の観測不能と臨時観測

こちらはネットニュース等でもけっこう取り上げられていたように思います。地震発生直後から観測データが欠測となっていた珠洲市にある津波観測地点が、地盤隆起によるとみられる海底の露出によって観測不能な状態となっていた・・・というものです。空中写真から判断がなされたようで、今回の地震の激甚さが垣間見えるように思います。


この観測地点には電波式津波観測計が設置されており、電波を海水面に向け発射し、海水面で反射し戻ってくるまでの時間から潮位を求め、その前後変動から津波の高さを算出できます。したがって、地盤隆起によって海底が海水面から露出してしまった場合、当然ながら津波を観測できなくなります。

一方で、先に示した気象庁長官の会見でも触れられていましたが、この地盤隆起によって津波被害が軽減されたのではないか・・・という見方もあるようです。


また、現在は機動型津波観測装置が設置され、津波や潮位の観測・監視が再開されています。


これらの観測機器等に関しては、少し前の『測候時報』にもまとめられています。気になる方は、お読みいただければと思います。

https://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/sokkou-kaiyou/82/vol82s105.pdf


3.気象庁機動調査班(JMA-MOT)による現地調査

気象庁は、自然災害が発生した場合に気象庁機動調査班(JMA-MOT)を派遣して現地調査を行っています。地震や津波に関しては、震度観測点や検潮所などの観測施設の被害状況についても調査されます。


今回の地震に関しても、取りまとめ結果が公表されています。広範囲で調査が行われたこともあってか、通常よりはかなり時間が経過してからの発表となったようです。

個人的に、特筆すべき点は2点あるかなと考えています。
1つは、震度観測点の地震情報への活用停止です。震度計を設置している台が傾いた等の理由により、3観測点で適切な震度観測が行われていないと判断されました。

一方で、そのほかに調査された78観測点では異常は認められなかったとのことで、顕著な地震が発生した場合でも観測できるという信頼性の高さが示されたのかなとも感じています。


もう一つ、特筆すべきと考えられた事項は、津波に関する調査結果です。

あくまで調査が行われた地域での記録ではありますが、新潟県上越市船見公園では津波遡上高が5.8[m]であったと推定されています。


4.震度7を観測した地点の追加

今回の地震では、通信障害によって、輪島市や能登市にある計3観測点の震度観測点のデータを得られない状況となっていました。これらの観測点のデータが1月25日に入手され、輪島市でも震度7が観測されていたことが分かりました。

この件はそれなりにインパクトのある事象のように思うのですが、ニュース等ではあまり取り上げられていないように感じました。個人的に、災害からの復旧・復興を進めるステージになってからでは、現場ではあまり必要とされない情報なのかもしれない・・・と感じるところもあり、速報性の重要さも考えさせられました。



今朝は、関東地方でも最大震度4の地震が発生しました。地震はいつ発生するか分かりません。「忘れた頃にやってくる」という言葉があるなか、最近は忘れる間もなくやってくる天災(自然災害)に対して、日頃から備えることの重要さを感じさせられる1か月でした。


そんな、今日このごろ