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アイとアイザワ

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「左ききのエレン」「アントレース」作者の短編小説です。この小説を原作とした同名の漫画も発売になります。よろしくお願いします。
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2017年11月の記事一覧

「アイとアイザワ」第16話

「アイとアイザワ」第16話

これまでの「アイとアイザワ」

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新宿。言わずと知れた世界有数の繁華街である。歌舞伎町と聞くと夜のイメージが強いかも知れないが、昼間は一転して明るい活気に包まれている。綺麗な今風の映画館や、人気のアイスクリームショップ、ハイブランドの煌びやかなブティック。デートスポットと呼んでも差支えが無いだろう。愛はこれまで、出掛けるとしても神保町など本がたくさんある街ばかりで(新宿の紀伊国屋には何度か来た

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「アイとアイザワ」第17話

「アイとアイザワ」第17話

これまでの「アイとアイザワ」

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喫茶リユニオンは、歌舞伎町の路地を少し入った所にある昔ながらの純喫茶だ。渋い木目のテーブルは、ヴィンテージ加工では無い本物の年代物。飛び抜けてコーヒーが美味い訳では無いものの、時間が止まったかの様な居心地の良い店内と相まって密かなファンは少なく無い良店だ。奥の隅のテーブルを陣取って、NIAIの社員・大谷と広尾は、店長自慢の水出しアイスコーヒーで一息ついた所だっ

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「アイとアイザワ」第18話

「アイとアイザワ」第18話

これまでの「アイとアイザワ」

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愛は、突然現れた年上の女性を観察していた。カメラアイの記憶によれば、その女性が着ている洋服はハイブランド「アンナ・キシ」のものだ。雑誌にも取り上げられていたドレスで、お値段は32万円。まさしく、愛が妄想していた歌舞伎町のいい女のイメージ、そのままだ。もしかすると、このドレスはプレゼントかも知れない。まだ着慣れていない新品のドレスを見て、愛は思った。それにしても

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「アイとアイザワ」第19話

「アイとアイザワ」第19話

前回までの「アイとアイザワ」

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愛は走りながら、花に状況を説明した。セカンドフラグと思わしき女性を12分後に見つけないといけない。その場所は新宿御苑。今いる歌舞伎町から御苑は徒歩圏内である。

「あーもう!どっちに行ったんだろう!?モーリスも居なくなってる!」

愛は直感に身を任せて、歌舞伎町から新宿御苑に行く最短経路を走った。果たして、これで正解なのだろうか?愛はアイザワに尋ねる。

「N

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「アイとアイザワ」第20話

「アイとアイザワ」第20話

これまでの「アイとアイザワ」

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ルミが気を失っていたのは、ほんの数十秒だった。モーリスがルミをおぶり、人目に付きづらい駐車場へ移動させた。通行人に怪しまれる事請け合いだったため、愛と花はわざとらしく「もう!お姉ちゃん、飲み過ぎよ!」などと横から賑やかした。そして目覚めた瞬間、モーリスの顔が見えるとまた逃げ出すと考慮して、介抱は主に愛が承った。が、それでもきっと狼狽するに違い無い。目覚めた瞬間

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