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最先端の外資系クラウド企業が使っているシステムとその背景 (Part 1)

振り返ってみれば、私も外資系での職務歴が20年年近くなり、その中でもここ最近はクラウド業界の中でも最先端を走る外資系企業に所属していることが多くなりました。この私の経歴からの持論ですが、その投資先 (または転職検討先) の企業が利用しているシステムを理解することで、「その企業がイケてるか、イケてないか」「ビジネスを考えた投資をしているか、していないか」 を判断することができます。
なぜかと言えば、企業にとって活用するシステムは、ビジネススピードを加速させる重要な原動力だからです。そこで現在イケてるクラウド企業が利用しているシステムラインナップとその背景を見ていきたいと思います。

なお、以下に記載する内容はシリーズC以降の企業での利用を前提にしています。
シードやシリーズA/Bでは、このようなシステムを使うよりもっともっと安くて簡単なシステムを使っている企業も多いです。私としては、「そのシステム決定は、フェーズでの投資判断上、決して間違いではない」 ということをお伝えしておきます。

会計 (Financial)

会計のエリアでは、Oracle社のNetsuiteとWorkday Financialsが使われていることが多いです。特にOracle Netsuiteは日本でも多くの企業が活用しているとも聞くのであまり驚きはないと思わます。
少々荒っぽい言い方とはなりますが、クラウド企業における会計とは、顧客からのサブスクリプション費用が入ってくるキャッシュの源泉となり、プロダクト開発とその運用および販売に関わる人件費・販売管理費用・バックオフィスの費用などがキャッシュの出先となります。
製造業と違い、物が動くことや原材料を調達する必要が限りなく少ない分、わかりやすい財務構造となるため複雑な管理が必要ないのが特徴です。Salesforceでの売上管理と連動して、そこからの売掛をNetsuite側が取り入れて請求書および入金管理、そして財務諸表の作成を行うのが一般的な流れです。
一方で、こういう会計領域ではSAPがよく知られていますが、彼らはあまり主流ではないように見えます。SAPは製造業を中心とした企業に使われているため、クラウドビジネスには"固すぎる"のかもしれません。

予実管理 (Business Planning)

多くの企業はAnaplanやAdaptive Insightを使っています。
特にAnaplanは、業種を超えた予実管理でのデファクトのソリューションであり、日本でも利用している企業が多いと聞きます。

ビジネスが加速度的に動くために、他の企業よりもフレキシブルに予算管理をして新規投資したいエリアと投資を抑制したいエリアを判断したいというのが経営者の欲求になってくるため、Planningのソリューションにはリアルタイム性や処理スピードが良いソリューションというのは非常に重要な要素となります。

クラウド企業は非常にシンプルなビジネスモデルのため、予実管理でコントロールできる変数はそこまで多くないのが実態です。主にキーとなる変数は、人件費 (head count)、経費 (expense)、R&D (研究開発費)になります。それらを、売上と利益に応じてコントロールしていく形になります。企業はそれぞれ、月次でこの予実管理モデルを更新しながら管理していきながら、該当するQuoterとFiscal Yearの着地と把握していくため、やはりリアルタイム性や処理能力の高さは重要な要素になります。

一方、海外では、Workdayで人事と財務と予実管理を一気にまとめている企業もいるようです。クラウド企業は、原材料を調達や工場などでモノを合成することがない分、基本的には"人"がビジネスの基礎となります。そのため、その人のスキル・パフォーマンス・サラリーに対して、どのくらいの実績を生んでいるかを把握し、それをもとに予実をコントロールするということを一気通貫してできるのは魅力的なのかもしれません。

顧客管理 (CRM)

いわずもがなのSalesforceが主流です。
もはやSalesforceを使ってないクラウド企業があるとしたなら、相当なダメ企業なのでは・・・と個人的にはおもいます。Salesforceを上回る、優れたソリューションを使っている可能性も無きにしもあらずですが、現時点では可能
性としてはありえないかなとおもいます。

収益予測・管理 (Forecast)

多くのForecastツールが存在していますが、その中で一番評判も高く普及率も高い製品はClariです。これは日本の方々にはあまり馴染みがないかもしれませんが、外資系クラウド企業では収益予測管理の精度Upのために特化したツールを利用していることは多いです。これは。、当たり前のことですが、収益予測と実績の一致は株価に直結する事項であり、その精度は何にもまして重要になってきています。

Clariは、SalesforceとGmailと連携することで当該案件の進捗を細かく自動に把握してくれ、その勝率 (Win rate) を予測してくれます。この細かく自動的に把握するとはどういう意味かと言えば、例えばSalesforceの中に登録されている情報を分析して勝率を読み取ってくれるだけでなく、Gmailでの顧客とのやり取り回数や頻度をもとに顧客と正しいエンゲージメントが結べているかを解析し、データに基づいた勝率を出してくれるのです。

私は2社ほどで使ったことがありますが、最近のバージョンは目覚ましく機能が発展しており、特にAIによるデータ解析によりWin rateの精度が高まっているように見えます。また営業個人個人のデータ特性をAIが是正してくれるところは非常に経営としては数字を読みやすくなるといえます。

例えば、以下の極端な2パターンの営業が存在したとします。

  1. とある営業は、Salesforceに、非常に消極的に案件の受注想定金額や受注日を後ろ倒しに登録する傾向がある。しかし、結果としては受注した際には、受注金額が上ブレし、しかも受注日は予定よりも早くなる。

  2. また別な営業は、非常にリスクをあまり考えずに案件登録し、案件受注金額も多めに登録し、楽観的な案件進捗を登録する傾向にあるとしましょう。しかし結果としては、受注率は低く、受注できたとしても金額が大幅に下ぶれし、受注日はいつも遅れる。

この2つの営業の特性を登録された行動データから読み取り、それをもと勝率判定してくれるものです。日本企業では収益管理をまだまだスプレッドシートベースで実施している大手企業も多いと聞きますが、Clariは非常に優れたツールであり、営業のDXのためにもおすすめです。

次回以降に取り上げる領域

ちょっと長くなりましたので今日はこのくらいにしたいと思います。
次回以降では、

  • 人事 (HR)

  • 購買調達および支払い管理 (Procurement)

  • 経費管理 (Expense)

  • 電子サイン (E-Sign)

  • マーケティングオートメーション (MA)

  • 営業向けインセンティブ管理 (Compensation)

  • OKR管理

  • シングルサインオンシステム (SSO)

などにフォーカスして記載していきたいと思います。

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