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ジェンダーと人種差別に興味がある人のための『デューン』講座

SF小説『デューン 砂の惑星』が映画化されるのは二度目だ。
一度目は1984年。当時新人監督だったデビット・リンチによるもの。
賛否両論まっぷたつのカルト映画だ。僕は『賛』側です。

1984年の『砂の惑星』と、2021年の『砂の惑星』。
見比べると当時と現代のジェンダー観や人種観が違って面白い。
先に述べておくが、僕はだから1984年版はダメなんだなどというつもりはない。

当時の映画は当時の時代情勢の中で真摯に作られたもの。
それを現代から見て、後出しジャンケンで非難するつもりはありません。
この映画は原作が1965年に刊行されたSF小説。

それを映像化するにあたっての解釈の違いが面白いということを書きます。
まず、小説には『人種』の記載はほとんどない。
性別や体格や顔つき、そして「日焼けしている」などの記述はあるけれど、その人物が地球でいうところの何系の人間かは全く書いていない。

肌の色や髪の色すらも書いていない人物がほとんどだ。
1984年版のキャストの見かけは全員がヨーロッパ系列の白人だ。
実際のキャストの人種は知らないけれど西暦10191年の宇宙には白人しかいないように見える。

2021年版のキャストは様々な人種がいりまじっている。
白人、黒人、黄色人種という区分けはもちろん、ヨーロッパ系、南米系、アフリカ系、アジア系といった味方でも実に様々な人種がいる。
僕の語彙にはない人種だっているに違いない。なんせ西暦10191年なんだから。

あと面白いのはジェンダーだ。
これは時代の違う2本の映画の面白さというよりも原作の面白さなのだか。
高貴な立場の女性と、砂の惑星の原住民の女性がメインキャラクターとして登場する。

どちらも強い。だけれども高貴な立場の女性は地、その強さを表には出さずにあくまでも男性を立てる。
はるか昔からの地球の伝統のように。
しかし、原住民の文化には男女の区別はない。厳しい砂漠では強いものしか生き残れないからだ。

男女の別に関係なく強いものが尊敬される。とてもわかりやすくそして厳しい世界。
原作では原住民の女性は白人だったのだけれど、今作では有色人種になっている。
そして主要人物のある男性が、1984年版では白人男性だったのか、2021版では黒人女性が演じている。

もう一点、僕が気になったこと。
主人公の少年はヨーロッパ系の白人。だけれどもその血の繋がった父親は南米系の俳優が演じていた。
2021年版は人種のごちゃ混ぜ具合、無造作感がとても心地いい。

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