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俺たちが納得できる値上げとは。

 ネーミング、パッケージング、そしてプライシング。大企業は理詰めで決めているのかもしれないけれど、御社はどうですか?
 例えばネーミング一つとっても、ターゲットに響く仮説を立てて、アンケートをしてみて。社内の誰かじゃなくて消費者目線で意思決定する。そういう手順を踏んでいるかい?勘と経験でエイヤーってしてないかい?
 この手順は、プライシング(=値決め)だって一緒なんだぜ?今回はそういうお話。


納得感がある値上げって?

 急激な円安からの、原材料価格の高騰からの、価格転嫁。中身を減らしたステルス値上げまで。「苦渋の決断です」だの言って、コスト増を言い訳に値上げする企業のなんと多いことか。
 ところでそれって消費者に関係あるのかな。御社のコスト増って、買う側に関係ないよね?消費者の心の内にあるのは「仕方ねえな」という諦めであって、全然納得してない。
 コスト増だけを言い訳にしない。値上げしたいなら価値を上げる。消費者が納得感のある方法でどう値上げするか。その課題を解決できるのが本書「勘と経験に頼らないプライシングの新常識 値決めの教科書」。著者の高橋嘉尋さんって同郷なんだね(勝手に親近感)。

値決めをまじめに考えてる?

著者・髙橋さんはこんな風に問題提起してます。

  1. 当然ですが、利益は価格×販売数-コストで決まります

  2. 販売数を増やしたりコストを削減したりする施策も利益に直接影響します

  3. しかし、この2つと違い、価格に関しては科学としての分析や投資がされてこなかった分野です

思い当たる節、ないですか?
もしかして御社、こういう負のスパイラルに陥ってないですか?

  1. 営業はシャカリキにやる(なんなら営業トークで値下げもする)

  2. コストカットは一生懸命やる(いまは賃上げ圧力もあるからなおさら)

  3. だけど(だから、かも)、値段はそのままで頑張る

  4. (次の段階は)我慢しきれなくなって、値上げする

 とある調査では「価格が1%改善すると、営業利益は23.2%も向上する」「プライシングのアップサイドは大きい」、ただ、単なる値上げじゃなく「バリューベースプライシングが大事」。本書の一貫したメッセージです。

バリューベースプライシングって?

 バリューベースプライシングは「顧客が商品・サービスに対して知覚している価値を起点に価格を決める」こと。
 いやいや、知覚してる価値って?という疑問を解決するために、調査が必要でしょう?勘と経験に頼らずに。これも本書の一貫したメッセージです。一流企業のバリューベースプライシングの事例をふんだんに紹介しながら、仮説の設定から、PSM分析などの専門的な調査方法、ひいては内製化に向けた人材育成まで。まさに「値決めの教科書」です。

とはいえ、当社が今できること。

 教科書どおりやることができれば、間違いなく飛躍的に利益は伸びるんだろう。そう想う。ただ、俺たちはやっぱり教科書どおりできない。それはだって「シェリー、俺ははぐれ者だから」。えっと、私の中小企業のイメージね、尾崎豊のシェリー。

 だから、せめてバリューベースプライシング(特にEVC分析)の考え方を理解しよう。

EVC分析の考え方って?

 EVC(Economic Value to the Customer)、本書では...

  1. 競合商品の価格に販売商品の追加的な価値を足し算する(まずは、付加価値分をオンする)

  2. その価格から、数%割り引いた値を販売価格とする(現実的な落としどころを探る)

 こうすることによって、「顧客にとっても事業者側にとってもフェアな価格に着地しやすく」なる。ただ「最終決定は感覚に依存するという弱点も孕む」、そう本書は指摘します。だから、PSM分析とか他の手法も併せて実施してね、と。
 まあ、言われてみればそのとおりなんだけど、まずはこの考え方をベースに、前向きな値上げをするタイミングを逃さない。そこだと思う。せっかく商品を改良して価値を上げても、値上げせずに頑張っている会社が多いような気がする。何なら、価値を上げたと思ってないパターンもありそう。

いつになれば俺は這い上がれるだろう

 這い上がるのは、ここから。一口に「付加価値を高める」といっても、新商品やマイナーチェンジとか、そんな大それたことじゃなくても、1つ増量した、小分けの袋をつけてあげた、プラスアルファのアイデアはいっぱいあるはず。
 プラスアルファしたら、価値を高めたことをちゃんと認識して、勘と経験に頼らずに値上げすること。そのやり方や成功事例は、本書「勘と経験に頼らないプライシングの新常識 値決めの教科書」に書いてある。
 転がり続ける、俺(=中小企業)の生きざまを、ときには無様なカッコで支えてる。そんな中小企業診断士でありたい。そう想いながら、本書を閉じました(おしまい)。


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