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ショートショート プロファイリング

ここはプロファイリングの天才集団と言われたFBIがAIに、とって替わられた数年後の未来です。AIは得意のプロファイリングで犯人像を特定します。

AI「この事件現場の写真を画像解析すると、どうやら犯人はこの犯行方法に相当こだわりがあることがうかがえます。」

(…事件現場は一見、何の変哲もない1人の死体が転がっている殺人現場のようだ。)

AI「この死体の靴紐を見てください。この結び目は、本人以外の何者かによって結ばれていることがわかります。」

(…確かに、靴紐に何か違和感がある。)

AI「靴紐を本人が結ぶときは、基本的には靴の上から結ぶため輪の向きが靴に対して横に広がります。一方、この死体の靴は輪の向きが縦方向に広がっています。このことから、犯人は、被害者を殺害したのち、靴紐を結び直したと考えられます。普通、殺人を犯した後に被害者の靴紐を結び直すものでしょうか?さらに、結び直した割に不格好に見える結び方をし、そのまま帰るというのはあまりにも不自然に思えませんか?」

(…なるほど。ということは、この結び方に何か犯人はこだわりを持っていたのだろうか、果たしてどのようなこだわりがあるのだろうか?)

AI「この奇妙な結び方を検索エンジンで検索したところ、日本の、死者を弔う文化の中には、こうして靴紐を、輪の向きが縦に広がるようにわざと結ぶ、という文化があるようです。つまり、この殺人を犯した犯人は日本人である可能性が高いでしょう。」

…後日、容疑者と思われる日本人が逮捕され、事件は幕を閉じた。しかし、その容疑者は頑なに罪を認めなかった。彼は「死体があったので、弔おうと考え、靴紐を結び直しただけだ」と供述していた。靴紐だけ結び直した理由は、お金を持っていなかったので、献花を添えることができず、死体が着ているものも着物ではないため、せめて手を出すことができる、靴紐だけでも、と結び直した、とのことであった。

…数日の拘留の末、彼の容疑は確定した。AIが防犯カメラシステムを調査し、容疑者と被害者が話している現場と、容疑者が靴紐を結び直しているシーンを発見したことが決め手となった。

…今回、殺害された被害者はAIを活用し、殺人事件を調査していた元FBIの警察官だった。そして、今回、容疑が確定した日本人もまた、元FBIの特殊警察官で、FBI内部を監査していた。

「つまり、殺害された被害者、罪が確定した加害者は奇しくも元FBIの警察官であった、ということか…。」
「FBI内部で怪しい動きがあり、それを解明しようとしたところ、一人は殺され、一人は罪を被せられたのではないか?そう考えると、2人が共通して関わっていたものは…そうか、それか!」

また一人、元FBIの警官がサイバーテロの容疑者として逮捕された。AIのプロファイリングによれば、犯人はFBIの内部を詳しく知っており、さらに内部の情報について人並ならぬ興味を持っている人物とはじき出された。今回の容疑者はそのプロファイリングに99.9%合致しており、誰もがAIのプロファイリングを称賛した。

あとがき

ど~も~。旅ノリです。
今回は2度目のショートショートを創作してみました。このアイディアを思いついたきっかけは、今話題の漫画、『推しの子』に出てくる、黒川あかねのプロファイリングについて考えたからでした。まるで本人かのように、対象者の心情の変化すらもプロファイリングできる黒川あかねの能力は、作品の中で天才として書かれています。そこで、私は、現実でも同じくらいのプロファイリングが可能なのか想像してみました。結論から言うと可能です。人はそれぞれの判断基準によって、外部から刺激を受けたときに、行動に現れるのか否かが決定します。そのため、対象者をプロファイリングする際に、対象者に起きた出来事と、その後の対象者の行動データを分析することで、対象者の判断基準を導き出すことができ、導き出した判断基準を基に行動することで、まるで対象者が憑依したかのように、対象者を演じることが可能です。この、蓄積した行動データを分析し、基準を導き出す、というプロセスはAIの処理と同様のプロセスです。日々、収集されている、私たちの行動データがあるため、AIがプロファイリングの天才になることは、もはや必然でしょう。いつか、この作品のようにAIの手のひらで転がされる時が来るかもしれませんが、あなたはその時に、転がされていることに気づけるでしょうか?私はたぶん気づくこともなくゲームオーバーです(笑)。でも、まあ、幸せならOKです!

したらね~!

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