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「いつかひとりで眠れるように」

長女の中学部の修学旅行が1週間後に迫っていた。中学2年生で地元の公立中学から、支援学校の中学部に転校した。入学して2、3日行って以来学校に登校できなくなったからだ。支援学校に転校して2年生の1年間はとにかく担任の先生とのこれはやっていい、ダメの闘いが続いたがなんとか休み休み登校した。

そして3年生になると、もともと長女が好きだった先生が担任になった。同じクラスに生まれて初めて友達と呼べる子ができて、毎日意欲的に通った。具合が悪いのを隠してまで登校する日もあった。

これは、修学旅行にも行けるのでは…と思った。中学で友達とたった一度だけの泊まりがけの旅行。できればいい思い出になればなあと思った。

しかし甘かった。長女の、私が(母が)不在のお泊まりへの不安は並大抵のものではなかった。1週間前から毎日。持っていくものの確認と修学旅行で訪れるところの細かいスケジュールの確認。夜寝る前に、毎夜毎夜旅行への不安を私に吐き出す。そしてそれを翌日担任の先生に伝えて配慮してもらう。その繰り返し。

私はへとへとになった。ここまで不安なのか。もう行って欲しいのか欲しくないのかもわからなくなった。

そして、うちで飼っているハムスターを見て長女が言った。「ハムスターはうちに来た時からひとりなのに(お母さんがいないのに)どうして眠れるのかなあ?わたしは眠れない」

私はそれを聞いて、思い出した。私も実は結構大きくなるまで、「お母さんはすごいなあ。結婚して自分の家族と離れて、遠くに住んで寂しくないのかなあ?私は外泊はできるものの、お母さんと離れて寝起きできるようになれそうにないや」と分離不安を抱えていた。

でもここにいる。今は夫と娘2人、実家を離れて暮らしているが、もうここが自分の家だ。お母さんはいなくても寂しくはない。これが自立ということなのか?

時間はかかるかもしれないが、長女もいつか私と離れて暮らせる日が来るはずだ。そう思った。  

1週間後、前日に「行きたくない」という気持ちが、「最初の目的地までママが送って欲しい」に変わり、当日には「学校の駐車場まででいい」に変わっていった。

結局、みんなと一緒にバスに乗り込み、翌日には最後まで参加して予定通り学校までバスで帰ってきた。夜は薬を飲んでもよく眠れなかったものの、大好きな先生や友達との一泊旅行はとても楽しかったという。

まだまだ長い道のりだけど、少しだけ親と子の努力が周りの方々のおかげで実った、中学3年の修学旅行の思い出。

「いつかひとりで眠れるようになるよ。きっと。」

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