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ムーミン谷の名言集 (トーベ・ヤンソン)

(注:本稿は、2014年に初投稿したものの再録です)

 ムーミンのアニメは観たことはないのですが、あの柔らかな独特の雰囲気は気になっていました。そんな関心から手に取ってみた本です。

 内容は、ムーミンの小説・コミック・絵本などから拾い上げた「フレーズ集」です。
 ムーミンやその仲間たちのキャラクターをよく知っている人であれば、もっといろいろな味わい方があるのでしょうが、私の場合はそういった予備知識がほとんどないので、読んでみて ”ちょっと気になったフレーズ” を以下に書き留めてみます。

 まずは、ムーミンの言葉から2つ。

(p15より引用) 霧の夜明けでした。みんなは、庭へ駆けだしていきました。八月の、ステキな一日を約束するように、東の空に、バラ色の光がさしはじめていました。
 朝日がのぼるのです。新しい門が、開かれます。すばらしい可能性への、扉です。なんだって、やってのけられる新しい一日が、待ってくれています。そう、きみたち、ひとりひとりが、気づきさえしたら!

 素直な明るさがいいですね。スパイスの効いた最後のフレーズも印象的です。そして、もうひとつは、ほんわりと気持ちが和む風景です。

(p36より引用) ひとりぼっちがさびしくて、ムーミントロールは、家中の時計のネジを巻いておいたのです。時間は、わからないので、いろんなふうに合わせておきました。
(うん、これできっと、ひとつぐらいは、合ってるさ)

 「ひとつぐらいは、合ってるさ」、ちょっと考えただけで、それでは正しい時刻を知るには全く役に立たないことに気づくのですが、こういった「ゆるいノリ」にはつい微笑んでしまいます。

 つづいて登場するのはムーミンパパ

(p17より引用) 「この世にも、絶対にたしかなことが、いくつかあるんだよ。たとえば、海を流れている潮流。四季のうつりかわり。朝になれば太陽がのぼること。それと、灯台には、あかりがともっていることだ。」

 そして、

(p38より引用) (きっと嵐って、朝日が、そのあとにのぼってくるためだけに、あるんじゃないかなあ)

 ムーミンたちに「希望」を与える優しさに溢れた台詞ですね。

 さて、ムーミン一家の仲間の代表といえば、やはりスナフキン。ちょっとニヒルで大人びたキャラクタが人気です。

(p140より引用) 「物は、自分の物にしたくなったとたんに、あらゆる面倒が、ふりかかってくるものさ。運んだり番をしたり・・・。ぼくは、なんであろうと、見るだけにしている。立ち去る時には、全部、この頭にしまっていくんだ。そのほうが、かばんを、うんうんいいながら運ぶより、ずっと快適だからねぇ・・・」

 束縛されない自然体を愛する、いかにもスナフキンらしい台詞ですね。

 そして、最後に紹介するのは、スナフキンの父親 ヨクサルの言葉です。

(p136より引用) 「どこへ行こうが、ぼくは、かまわないよ。ぼくには、どこもみんな、いいところなんだ

 このあたり、親子のDNAを感じます。

 さて、本書、私のように、ほとんどムーミンを知らない人でも、何となくムーミンとその仲間たちの和やかな姿が浮かんでくるような、ほのぼのとした内容ですね。

 ただ、タイトルの「名言集」というイメージで手に取ると、ちょっとギャップを感じるかもしれません。決して教訓めいた箴言が詰まった本ではありませんから。



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