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企画は、ひと言。 (石田 章洋)

(注:本稿は、2014年に初投稿したものの再録です)

 レビュープラス(当時)というブックレビューサイトから献本されたので読んでみました。

 著者の石田章洋氏は放送作家、主な担当番組としては「世界ふしぎ発見!」や「TVチャンピオン」があるとのこと。
 その石田氏が「企画」を通す要諦を明かにします。Key wordは「ひと言」です。

 私も含め多くの人は「ひと言」というと「キャッチコピー」を思い浮かべます。たとえば、糸井重里さんの代表作「おいしい生活」。これは1980年代、「西武百貨店」の広告コピーでした。

(p46より引用) 「おいしい生活」は・・・「モノを売る」だけではなく「生活の提案をする」デパートがあっても良いのではないか、という発想のもと「文化の発信者」であることをアピールする企業コンセプトをあらわすものとして生み出されました。

 ただ、こういった「キャッチコピー」は、多くの人々に届けられる “最終的な言葉” です。この言葉にブラッシュアップされる一歩手前に位置するのが、石田氏の言う「ひと言」です。

(p47より引用) 「モノを売るデパートから生活を提案するデパートへ」
これなら、何を意図した企画なのか一目瞭然ですね。

 この「ひと言」には、“5つのS” で表される特徴(強み)があります。

(p51より引用) 5つの「S」とは、
①「Short」
②「Simple」
③「Sharp」
④「See」
⑤「Share」

 これらの中で、石田氏のオリジナリティが感じられるのは「See」ですね。「ひと言」は「見えるもの」でなくてはならないというのです。

(p65より引用) ひと言で、相手の頭のスクリーンに映像を浮かべる。これが「見える」という意味です。

 この例として示されたのは「旭山動物園」のひと言、「形態展示から、行動展示へ」。確かに、新しい動物園のイメージが浮かびますよね。これなら、やってみよう、という気持ちが高まります。

 その他に改めて参考になったのは「ヒットの形」を説明したくだりです。

(p102より引用) 「これまでにあったもの」に時代に合わせた「新しさ」や「付加価値」を加えたもの。
・・・
 つまり「上からみた円」が“ヒットの本質・キモ”、「横から見た高さ」が“新しさ”あるいは“付加価値”ということになります。

 この考え方は、シンクタンク・ソフィアバンクの代表を務める田坂広志氏が弁証法的思考法を説明するうえで “事物の螺旋的発展の法則” としてよく話されているものです。

 その点で本書をみると、まさに、この「ヒットの形」に準拠したものといえるようです。



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