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経済学を味わう -- 東大1、2年生に大人気の授業 (市村 英彦 他)

(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)

 ダイヤモンド社の2020年お薦め書籍で紹介されていたので手に取ってみました。
 内容は、東京大学教養課程での「現代経済理論」の講義録がベースになっているとのことです。

 読んでみると、期待していたとおり(今さらながらですが)数多くの興味深い気づきがありました。

 まずは、最初「01 経済学がおもしろい」の章から、“経済学特有の考え方の共通点” について。
 松井彰彦教授によると、それは “「それぞれの駒がそれ自身の行動原理に従う」という見方” だと言います。

(p3より引用) よく、経済学は「合理的な人間を扱う学問だ」などと表現されることがあるが、スミスはそうした合理性はとくには求めていない。ポイントは、個々のプレイヤーが個々の行動原理に従い、それは為政者の意図とは必ずしも同じではないという点である。

 この指摘は私にとっては(恥ずかしながら)新鮮でした。

 続いて、「02 市場の力、政府の役割」の章から、“最適状態に導く市場” についての小川光教授の解説です。

(p27より引用) 私たちはなんとなく、個人が好き勝手に行動すると社会全体が変な方向に行ってしまうと考えがちだが、経済学の教えは違う。すべての個人が自分の利益を追求して行動すると、結果的に社会全体が望ましい状態に落ち着くというのである。このことを、経済学者は厳密な数学を用いて「厚生経済学の基本定理」という形で証明した。

 とはいえ、“市場の失敗” についても自らの研究分野の紹介と併せてこう紹介しています。

(p29より引用) 市場だけでは解決できない問題が存在するとき、政府が市場に介入し、より望ましい社会への舵取りをする必要性が生じる。公共経済学とは、市場における自由な取引を行う経済社会を前提にしつつ、そのもとで発生する市場の失敗と不平等にかかわる問題に対して、政府、自治体、公企業といった公共部門がどのような役割を果たせるのかを研究課題とする分野である。

 さらにもうひとつ、「08 理論と現実に根ざした応用ミクロ分析」の章から、“産業組織論の適用条件” についての大橋弘教授の見解です。

(p161より引用) ある政策に関して有意義な議論をするためには、(1) 制度理解、(2) 理論に対する理解、(3) 実証分析に基づく定量的な知見 3つのすべてが必要となる。

 特に、3番目の「定量化」は議論に決着をつける重要な要素となります。
 「開発経済学」等経済学の多くの分野においても当てはまることですが、“政策の適否” を判断するための「定量化(見える化)」は不可欠です。
 “RTC革命” という言葉があるそうですが、RTC(ランダム化比較試験:Randomized Controlled Trial)に代表されるフィールド実験手法が取り入れられた結果、経済学は、その政策提言の信頼性を増すことができたようです。

 さて、本書を読み通してですが、「05 実証分析を支える理論」の章には久しぶりに参りましたね。
 計量経済学入門として簡単?な確率論や統計学の説明があったのですが、その数式が全く理解できませんでした。
 あと「12 デリバティブ価格の計算」の章も同様です。

 もちろん、私の知力が圧倒的に足りなかったのが要因なので情けない限りではありますが、ここまで???だと・・・、ダメですね、せっかくの良本に失礼でした。



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