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多読術 (松岡 正剛)

 松岡正剛氏の本は、今までも、「17歳のための世界と日本の見方―セイゴオ先生の人間文化講義」「日本という方法‐おもかげ・うつろいの文化」「白川静 漢字の世界観」等をはじめとして何冊も読んでいます。
 それらの著作からも垣間見ることができるように、松岡氏の読書の量はとてつもないものがありますし、その読書の守備範囲もまた極めて広きに及んでいます。まさに、「読書の超人」であり現代の「読書の先達」のひとりです。

 そういう松岡氏は、「本を読むこと」をこんなふうに例えています。

(p12より引用) 読書は何かを着ることに似ています。・・・
 ということはね、本は1冊ずつ、1冊だけを読んでいるんじゃないっていうことです。ジーンズの上にシャツを着たりセーターを着たりジャケットを着たりするように、自分のお気にいりのジーンズ・リテラシーの上にいろいろ本の組み合わせを着たり脱いだりすればいいんです。

 従来より松岡氏は、「編集工学」という方法論を提唱しています。
 松岡氏によると「編集工学」は、「意味的な情報編集のプロセス」を研究して、人々の世界観がコミュニケーションを通じてどのように形成されていくか、変容されていくかを展望することを目的としているとのこと。

 松岡氏からみると、「読書」は、数ある「編集」活動のひとつであるということになります。

(p76より引用) 読書というのは、書いてあることと自分が感じることとが「まざる」ということなんです。これは分離できません。・・・
 ということは、読書は著者が書いたことを理解するためだけにあるのではなく、一種のコラボレーションなんです。ぼくがよくつかっている編集工学の用語でいえば、読書は「自己編集」であって、かつ「相互編集」なのです。

 松岡氏は、これからの読書論は「方法としての読書」として提案されるべきと考えています。
 その立場から、本書では、松岡氏流の多彩な「読書術」が披露されていますが、その中のひとつで私が関心をもった「方法」を書きとめておきます。

(p123より引用) そもそも読書には、「読前術」「読中術」「読後術」があるんだろうと思います。読前術は本との接し方は目次読書に始まりますし、読中術にはマーキング読書マッピング読書がある。読後術本棚の並びにも、自分で感想ノート感想ブログを書いてみることにもあらわれる。いろいろです。

 もちろん中核は「読中術」ですが、「そもそもどんな本を選ぶのか」から読書は始まっています。自分の「好み」を大切にして「キーブック」から連鎖的に広げて行くというイメージでしょうか。ただ、「自分の好み」だけに重きをおくと、意外な本とのめぐり合いのチャンスは少なくなります。

 「キーブック」を見つける際にも、また、読書の幅を広げる際にも、大事な方法が「他者からの推薦」です。

 松岡氏が高校卒業のとき、中学の国語の恩師から薦められた本は、伊藤整訳「チャタレイ夫人の恋人」の初版本だったとのことです。



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