井上ひさしの読書眼鏡 (井上 ひさし)
(注:本稿は、2013年に初投稿したものの再録です)
いろいろな方の読書案内は、自分では気がつかないような本を知るよいきっかけになります。
本書もそういった期待をもって手にとってみました。
井上ひさし氏といえば、私の世代は「ひょっこりひょうたん島」の原作者という印象が強いですね。恥ずかしながら、氏の小説や戯曲は読んだことがありません。少し前に「この人から受け継ぐもの」という小文を読んだぐらいです。
本書は、井上ひさし氏が読売新聞で連載していた読書エッセイ等を採録したものです。2~3ページで1冊の本を紹介しているのですが、その中からひとつ、心にとまったくだりを書き留めておきます。
インターネットの普及等によって情報の入手が圧倒的に容易になっている昨今、“知者” について語っている部分です。
そういった中で、井上氏は、山崎正和氏こそ数少ない知者のひとりだと言い、山崎氏による「二十一世紀の遠景」からの一節を引いています。
この状況において山崎氏は、「たとえ明日世界が滅びるとしても、それでも今日、一本のリンゴの木を植える」という言葉をもって、知識を貴ぶことで将来を楽観視しようとしています。
そして、その覚悟に井上氏も共鳴しているのです。
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