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スルーされない技術 (石田 章洋)

(注:本稿は、2014年に初投稿したものの再録です)

 レビュープラス(当時)というブックレビューサイトから献本されたので読んでみました。

 著者の石田章洋氏は放送作家。石田氏の著作は、先の「企画は、ひと言。」に続いて2作目になります。

 「スルーされない技術」というタイトルですが、これは、「自分の言いたいことを伝える技術」という意味でもあります。
 その点では、本書で紹介されているアドバイスは、会話や会議などに止まらずプレゼンテーションを行う場合にも大いに参考になります。

 たとえば、代表的なものとしてはこんなヒントがあります。

(p65より引用) プレゼンやスピーチの最高の“つかみ”は、課題になっていることの要点を最初にズバリといってしまうことです。

 これは誰もが指摘するアドバイスですが、実際のプレゼンの場に立つと、かなり強烈に意識しておかないとなかなか実行できなものです。つい、より分かってもらおうという気持ちが前に出て、背景や理由めいたものをあれこれ付け加えたくなってしまいます。結果、メッセージの「力」が鈍ってしまうのです。

 その他にも、聞き手により関心を抱かせる方法として“フック”をかけ続けるという話し方も参考になります。
 これは、疑問を提示してはそれに答えるといったあたかも「一人で会話を進めていく」ようなやり方です。

(p132より引用) 受け手が「なんで?」「どういうこと?」と引っかかった次の瞬間に、その疑問に答える。この絶妙なやりとりを繰り返して対話を進めていくうちに、「本当に伝えたいこと」がネジクギのようにしっかり相手に食い込んでいき、読者や視聴者と心が通い合った深いコミュニケーションになっていくのです。

 聞き手の頭のなかに「?」を浮かばせる、その「?」によって聞き手は自ら次の話を聞きたいという思いを抱くのです。“言われたこと”より“知りたいこと”の方が圧倒的に記憶に残りますね。

 本書では、こういった“伝える技術”を、著者自らの経験にもとづく豊富な実例を交えて次々と紹介していきます。
 それらの数多くのTipsの中には、私もそこそこできているなと思うものも少しはありましたが、私自身「圧倒的に欠けている要素」もありました。それは、私の表現力の貧弱さです。

(p115より引用) 映像や音声、さらには香りや味、肌触りなどをありありとイメージできるような描写を織り交ぜながら伝えると、いっそう相手の心に深く届き、スルーされません。・・・
 ふだんから、単純な言葉で表現するのではなく、自分なりの感性で映像が浮かぶような言葉を使って“描写”するようにしてみましょう。

 私の場合、話をするにしても文章を著すにしても修飾語の語彙に乏しく、ワンパターンな言い方しかできていません。情けないほどに表現はプアーです。直喩・隠喩を駆使し“五感”で感じさせるような豊かな表現は、私にとっては、かなり訓練しないと難しそうですね。

 もっと意識的にリッチなコミュニケーションシーンに立ち会う努力をしなければ・・・。小説とか、映画とか、演劇とか・・・、もちろん刺激的な人との会話もそうです。



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