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コンセンサス型意思決定とヴィジョンフューズドワークショップの関係2

1では『コンセンサス型意思決定』って何なのかをまとめてみた。

今回の2では、『ヴィジョンフューズドワークショップ』の説明をする。

ヴィジョンフューズドワークショップ

『ヴィジョンフューズドワークショップ』とは、複数人の参加者がもつヴィジョン(ここでは『理想像』)を融合(フューズド)させるワークショップである。

例えば、友部町がこんな風になったらいいなぁという理想像を市民で集まって話し合いでつくるとする。

ワークショップでありがちな場面でもある。

ちょっとマニアックな細かい話になるが、この手のワークショップデザインを考えると

①まず参加者にいかに理想像に意識を向けさせられるか。

②意識を向けさせた理想像をいかに表現・表出させられるか。

③そして表現・表出させた理想像群をいかにひとつのものとしてまとめ上げていくか。

少なくともこの3つのステップをデザインする必要がある。

みなさんならどういうデザインをするかしら。

僕の場合、パタゴニア日本支社での戦略策定で、『ヴィジョン』を『コンセンサス型意思決定』でつくってきた。

問いや対話によって引き出しながら、それらの粒の結びつきをとらまえて確認しながら編み込んでいく。

ある種の出尽くした感が訪れたタイミングで、最終、文面の仕上げは代表者が行い、それをあらためてコンセンサスをとって微調整していく。

こうして『反対(ノー)』がなくなるまで行うのだが、とにかく違和感があるうちはそれがよくわからなくても『反対(ノー)』を出すように求められるので、『反対(ノー)』がなくなったときには全体が熱狂したものだった。

最後の数年になると、わざわざハンドシグナルで意思確認をしないでも必要なことを話し、互いに聴き合う形になっていった。

ただここに至るまでそれなりに時間や話し合いをたくさん積み重ねていく。

2018年にサンフランシスコとポートランドに行くことがあった。

そのとき、パチャママアライアンスというNGO?が主催する宿泊型のワークショップに参加した。

そのワークショップの中でインスピレーションのあるセッションがあった。

講師の方の名前を忘れてしまったが、最初、リストから気になる課題を複数、選んで、隣の人と話す。

そのあと、それらの課題がすべて解決した世界をイメージして、絵に描いて、それをまた隣の人と話す。

最初の時とはトーンが変わり、会場がにぎやかな声と笑顔に包まれていた。

講師の方が、その体験についてこんな感じのことを言った。

"Pain pushes us. But Vision pulls us."

『痛みは私たちを押すが、ヴィジョンは私たちを引っ張ってくれる』

つまり、痛み(それにまつわる悲しみや怒り)による社会運動は押し続けてきて疲れ切ってしまう。しかし、ヴィジョン(理想像)による社会運動は、私たちを引っ張り続けてくれて続いていく

とのこと。

このとき、閃いたのだ。

このセッションはヴィジョンの大切さを伝えるためにワークしたわけだが、なるほど、最初、課題を考えることで、その背後にある理想像へのアクセスの扉を開いている。

課題の裏には願いや理想像があるのだ。それがなければ課題とは感じないのだから。

このワークは①の問いへの答えになっている。さらに②についても『絵で描く』『人に伝える』という方法でそれを引き出している。

イメージはいきなり言語化しにくいし、ヴィジョンは雰囲気の中にあると言えるから、『絵→説明』は秀逸な手段である。

ヴィジョンフューズドワークショップの手順

1)テーマに関して100点満点で現状何点かつけてもらう。

2)なぜその点数なのかを隣の人に説明する。

3)もし100点満点だったら、それはどんな状態か想像して感じてもらい、A4の紙に絵で描いてもらう。

4)描いた絵を隣の人に説明する。

5)付箋とペンを用意して、今度は全員に対して絵の説明を順番に行う。そのとき、話を聴いている人たちは、インパクトのある言葉や印象的なこと、共感したこと、思い浮かんだことなどを付箋にどんどん書いていく。話している人は説明をするだけ。

6)全員が絵の説明を終えたら、溜まった付箋を模造紙に発表しながら貼っていく。そのとき、近い内容の付箋が近くにまとまるように貼っていく。

7)みんなで全体像が見えてくるにつれ、付箋を動かしながらまとまりを整理していく。

かさまSDGsプラットフォームでの一場面

8)まとまりができたら、そのまとまりにタイトルをつける。ただし、まとまりにある付箋を読まずにタイトルだけでそのまとまりの内容がわかるように名づける。

タイトル群が、融合したヴィジョンということになる。

ヴィジョンフューズドワークショップの限界、そして時間コストと効果

現時点では、このやり方で最大18名が限界ではないかと思ってる。

8名から12名がちょうどいい人数な感じがする。

つまり、学校のクラス30〜40人とか、市民参加でやるワークショップで50〜100人とかでは、何かしらの工夫が必要となる。

ここは今後、考えていきたい。

次に時間コストと効果については、4〜6時間ぐらいかかるイメージですが、仕上がっていくプロセスの熱の高まりとできあがったときの熱狂と一体感は成果物以外としても大きな効果だと思う。

手に持っている紙が各自の描いた理想像の絵
@かさまSDGsプラットフォーム

時間的には頑張れば3時間ぐらいでもやれるだろうか慣れてない人にはなかなかしんどい気もする。

ただ長い時間かけてじっくりやるより、テンポよくラッシュしていく感じの方が、このワークショップの効果が大きい感じがする。

なぜなら、時間の制約によって、頭よりも感覚と動きに傾いている方がヴィジョンに繋がりやすいし、チームでやる感じが強まるからだ。

これまでやってきたどの場であっても、初めての人たちも気づいたら立ち上がって、みんなで話し合い協力して作り上げてきた。

タイトル群からヴィジョンのステートメントをつくる場合は、代表者がまとめて、最終、『コンセンサス型意思決定』で仕上げる流れになる。

いったん『ヴィジョンフューズドワークショップ』についてはここまでにする。

いよいよコンセンサス型意思決定とヴィジョンフューズドワークショップの関係について書いてみたい。

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