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「こころを使いこなすこと」こそが仕事で重要な理由

以前cakesで「こころを使いこなす技術」という連載を書いていました。cakesは残念ながら2022年8月31日に終了してしまったので、その連載を私のnoteに載せていきたいと思います。内容はほぼ同じですが、cakes連載という文脈に関する文章を削っている他、適宜加筆修正も行う予定です。

今回はまず第一回となる"「こころを使いこなすこと」こそが仕事で重要な理由"です。この記事を書いたのは2019年ですが、その後にいろいろと良い「メモ」アプリが出てきているので、認知や感情についてメモするのがとてもやりやすくなりましたよね。そういった変化も踏まえつつ、ぜひとも皆さんの参考になれば嬉しいです。


心を使いこなすことで道を切り開く

以前にnoteで「15年間「不安」に苦しんだ私がいま本気で作りたいものとは何か?」という記事を書きました。浪人時代の「ある日」から常に不安に苛まれ悩み苦しんできたこと、それを認知行動療法のカウンセリングを受けることで克服していったこと、その方法論をもっと多くの人に知ってもらうために動き出したこと。

この記事を通じてもっとも伝えたかったことは、心の問題にうまく対処できないと仕事もうまくいかないし、せっかく持っている力も発揮できないということです。

例えば「上司の反応が怖い」とか「締切までにこの仕事を終わらせられるだろうか」とか「これをやるのは恥ずかしいな」といったさまざまな感情が原因で、せっかくきちんと準備に時間を使いながら、期限までに資料を完成させられない、などの失敗をしてしまう例はとても多いです。でも、そういう仕事の失敗を自分の心の問題に結び付けられる人はすごく少ない。

そして、多くの人は仕事ができないのは知識やスキルが足りないからだと考えたりしてしまう。だからベストセラーのビジネス書を買ってきて読んだり、資格取得に走ったりします。

でも、いくら知識やスキルをたくさん持っていても、「上司が怖い」「顧客が怖い」という感情に対処する方法を身につけていなければ、それらを活用することはできません。

ここは私が受験、就活、転職といった人生の転機で常に失敗してきた最大のポイントでした。真面目に勉強したり、いくら周到に準備を重ねても、いざ本番を前にして「不安」の感情に翻弄されて、本番で実力を出せなかったら全ては水の泡です。努力の「過程」はそこでは問われませんから、残るのは無残な結果だけ。これはキツかったです。

でも、30代半ばに認知行動療法の存在を知り、カウンセラーの方の力を借りながら粘り強く実践してその手法を身につけることで、人生を好転させることができました。

コンサルでリストラ寸前に追い込まれ、間接部門に飛ばされたところから、数千億円規模の事業のターンアラウンドに深く関わり、COOやCFOと共に事業戦略作りから実行まで担い大きな成果を出すことができました。さらに上海に駐在し、世界のビジネスの最前線で多国籍の人材と働く貴重な機会も得ることができました。

これらの仕事はきわめてタフで、日々緊張を強いられるストレスの高い仕事でしたが、身につけた方法を駆使して、すぐ不安になってしまう自分の心の問題に対処することで、仕事に全力で集中することが可能になったのです。

この連載ではその過程を振り返りながら、もっと多くの人に気軽にこの「技術」に親しんでもらうこと、使いこなせるようになること、を目指します。ただ、私は専門的な心理学の教育も受けていませんし、もちろんカウンセリングのプロでもありません。なので、あくまで一人の「ユーザー」として、日々仕事や私生活で感じるストレスをどうやったらうまく処理していけるかについて、自らの体験や実践を通じて分かりやすく伝えていければと思っています。

「メモすること」がすべてのはじまり

では、どうやるのか? とてもシンプルですが「メモすること」が全てのスタートになります。

メモ?と皆さん感じると思うのでまずは例を出したいと思います。私がiPhoneのEvernoteアプリに実際につけていたメモです。

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状況: 目覚めが悪く、朝から体が重い。気持ちも冴えない。恐らく今リードしている仕事の進め方に金曜日少し部門長が不満そうだったから、先行きに不安を感じている。

考え: 仕事進める上で色々障害が多そう。あとスピードも求められているぽい。失敗することやうまく進まないことを考えると憂鬱だ。

感情: 不安(70) 無気力(70)

対応: 姉夫婦が来ていたので夜食事だったが、その前になんとか気分を晴らすために5キロ走る。ただあまり気が晴れず、食事の時もなんかイライラしていた。

私はとにかくあらゆる場面ですぐ「不安」が押し寄せるタイプでした。まさにこのメモもそうで、金曜日のミーティングでの部門長の不満げな様子が頭から離れずそれを週末までずっと引きずっていたことがよく分かります。

これはまさに「思考のクセ」と呼べるもので、私はどんな状況でもわざわざ不安になる要素を「見つけてきて」、それを巡って堂々巡りで悩み続けて、結果として仕事する気力を失っていく、という負のサイクルを繰り返していました。

でも、いま振り返って冷静に考えてみると、ここでの部門長の不満げな様子というのはそこまで深刻なものではありません。ちょっと自分と考え方が違うかな、くらいのものです。上司からのそのくらいの反応は普通で、それで別に私の評価が変わるものでもないし、仕事を進める上での影響も特にはないはずです。

そして、そこが認知行動療法のプロセスにおける「コア」になります。

自分が悩んでしまう状況の「瞬間を切り取って」、そこでの自分の感じ方をメモしておきます。これを繰り返し続けることで、自分がはまりやすい悩みのタイプや歪んだ捉え方などの「傾向」をだんだん客観的に掴むことが可能になってきます。

その結果、この例で言えば、「まあ上司はああ言ってるけど、自分の進め方は間違ってないはずだしそのまま成果が出るまで頑張ろう」というように、前向きな捉え方をして適切な行動を取っていくことが可能になります。実際のところ、いまの私はこうしたストレスがかかる状況に直面して不安を感じても、いったんその状況を俯瞰的に捉え直して「まあそれほどやばくはないか」と考えて前向きなアクションを取ることが普通になりました。

方法論としてはわりとシンプルですよね? ただ、自分の「認知の歪み」に気づき、それを修正していく、というのは実際はなかなか大変です。私も2年間くらい地道にやり続けて身につけることができました。なので、この連載では、私に実際に起こったリアルな経験や試行錯誤に具体的に触れながら、ユーザーとして実践していく上ではどこがポイントなのか、これを身につけると(仕事や私生活で)どんな良いことがあるのか、といったことを分かりやすく伝えていきます。

自分の少し歪んだ思考のクセが原因でせっかく持っている潜在的な力を発揮できない、というのはとても悲しいことです。私もそのことが原因で本当に長い間つらい思いをしてきました。もっと多くの人が悩みの堂々巡りから抜け出して、自分がやりたいと思うことを自分のペースでやれるようになってほしい。この連載を通じて少しでも多くの人にこの思いが届き、皆さんの変化の一助になれるようがんばりたいと思います!


MYCOPING(マイコーピング)では、悩みがちな方に対して、「予防」として認知行動療法に基づくカウンセリングを受けて頂くサービスを提供しています。ぜひお気軽に「無料相談」をご予約くださいませ。

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