本18 なんらかの事情 岸本佐知子

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 これはエッセイだが、身の回りのことをつらつらと綴るだけにとどまらない。岸本佐知子はひとクセもふたクセもある。時に現実と妄想が交差し、あえてリアル感を失わせ、読んでいるこちら側の足もとをグラつかせる。
 やがてその奇妙なアンバランスさはある種の快感を伴って、次のページ次のページへと指を動かす。そうなってくるともう抜けられない。頭ん中がすでに正気ではない。朦朧としているにもかかわらず、どこか一部を覚醒させる。だから一冊彼女のエッセイを読めば、また欲しくなる。その場になければきっと涎を垂らす。ミランダ・ジュライも代用になる。

 

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