なぜアメリカはプーチンを助けるインドに接近するのか?
この記事を読んであなたが得られるかも知れない利益:米国がインドに急接近している。したたかなグローバルサウスの盟主とどう折り合いをつけるのかが注目されている。しかし、プーチンに秋波を送るような、民主主義に逆行している国に、アメリカはどうして接近しているのか。その背景を探る。高校生向き。
インドは民主主義の敵か味方か
高校生のキミは、インドって言うとイギリスの植民地からの解放運動で、ガンジーという指導者が非暴力運動を行った、そういうふうに教わったはずだ。
お釈迦様がインドで生まれた(本当はネパール)と信じられていることもあり、高校生のキミはインドは平和的で温和な国だというイメージを持っているんじゃないかな。
確かに、世界では10年ほど前までは、インドは民主主義国家と信じられていた。
ただ、今はどうだ。
第18代首相のナレンドラ・モディ氏は、市民の自由を抑圧し、言論の自由を縛り上げ、マイノリティの権利を蹂躙している。
確かにインドはGDP(国民総生産)では日本を抜く勢いだが、労働機会も投資も増えず、グローバルなムーブメントを起こすところまでいってないのは、民主主義が行われていないことの証左とも言えるだろう。
今、世界がインドを非難しているのは、プーチンに対して何の文句も言わないどころか、フレンドリーな素振りすら見せているところなんだ。
実際にインドは西欧のロシア経済制裁を尻目に、ロシアから石油や武器を買ったりしている。
外交とは国益のこと
さて、今日は外交官志望の高校生のキミに、外交とは何かを考えてもらいたいのだ。
その答えは、「国益」だ。
北朝鮮を世界はよく「ならずもの国家」と例える。
ロシアに味方するインドも、そう呼べるのではないか。
でも、将来、外交官になるキミも、そんな国と付き合っていかなければならない。
今日は、アメリカがなぜインドに接近しているかを取り上げ、国益とは何かを考えよう。
きみが外交官になったときに、まずやらなくてはならないことは、国家として日本が付き合うべき国の値踏み、だ。
その国は日本にどんなメリットをもたらすのか。
それを勉強しよう。
アメリカがインドに接近する5つの理由
アメリカが、今インドに急接近しているんだ。
5つの理由がある。
1.対中国を念頭に置いて、インドの軍事力にあずかりたい
国にとって安全保障がいちばん大事なことなんだ。
だから軍事協力ができる国とは、仲良くしておきたいのさ。
しかし、インドはアメリカ軍に対し、全く軍事協力の気配を見せていない。
2.インドと手を組んで中国の覇権拡大を阻止したい
国っていうのはロシアだけじゃなく、何の規制もなければ領土を拡張する生来の欲望があるとされる。
中国はインド洋(The Indian Ocean)周辺の支配の欲望があるとされる。
インドはそれを阻止する軍事力を持っており、中国の領土拡大の野望をストップするという点で、アメリカとは共通の利益を持っている。
3.インドの製造力が米多国籍企業に必要
国益とはカネのことだ。
そして国益とは自国の大企業のことであり、それを盛況にさせることでもある。
インドはいまや中国に代わって世界の工場だ。
インドの工場のおかげで、アメリカの多国籍企業の生産拠点が母国アメリカに集中せず、分散することで大きなコストカットになっている。
4.気候変動問題の主役だから
アメリカの国益は、世界経済をアメリカのエンジンでまわすことだ。
経済活動の負の副産物として、地球がオーバーヒートし、そのせいで天変地異が頻発している。
アメリカの国益は、この件でリーダーシップをとることだ。
インドは、地球温暖化をもたらす温室効果ガスの放出では世界第三位であり、再生エネルギーの生産では世界四位だ。
インドは温暖化の犯人でもあり、救世主でもあるという微妙な位置にいる。
しかし、ある意味、気候問題の解決のど真ん中にいるのだ。
5.インドの中国化を防ぐため
国益とは、しばしば、その国が信じる政治体制を守ることである。
例えば資本主義とか、社会主義だ。
中国はある意味やばい経済モデルを作ってしまった。それは国家主導の経済だ。
民主主義が機能しなくても、国家主導経済で成功する中国をうらやんでいる発展途上国は多い。
インドもそれを狙っているフシがある。
民主主義の盟主を自認するアメリカにとって、インドが中国になるのは、絶対阻止しなくてはならないのだ。
国益とは何か
さて、どうだっただろうか。
外交は国益、と言った。
国益は短期的な国益と、長期的なそれがある。
そして、国益とはそもそもなんなのか、は人によって違う。
そして、時間の経過によっても、つまり状況の変化によっても国益は何かは、変わってくる。
そういう意味では、政治学と経営学は同じなのだ。
まずは、変化を把握することから始めよ。
外交官になるキミは、歴史の勉強とともに、今の現在進行系の世界を常に見て、判断しなくてはならない。
僕はnoteで書くことで、そんなキミにこれからもヒントをあげられれば、と願う。
野呂 一郎
清和大学教授
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?