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クリスマスキャロルが流れる頃にはデパ地下に用がある

 師走ということもあり、なかなか記事を更新できずにいた。そう考えると、私も立派な坊主なのかもしれない。
 そんな坊主の端くれとしてはいかがなものかとは思うが、そろそろクリスマスの準備をする必要がある。というのも、クリスマスイブ当日はM-1グランプリが十五時から始まるわけで、そうなってしまうと以降テレビから離れられない。だから、他の人よりも早く取り組まねば、なんとも味気ないクリスマスイブになってしまうのだ。テレビを見るだけの時点で味気ないと言われれば、まあ全くその通りなのだが、一緒に当日を迎えてくれるような人間はいないのでしょうがない。私は今年、ただM-1グランプリのみと寄り添う。
 私の一年はこれと有馬記念で終わるといっても過言ではない。除夜の鐘によって全てを消される前に、思う存分煩悩を開放する所存だ。これで坊主だと自負があるのだから手に負えない。

 当日は一日中テレビの前で地蔵になるため、まずは飲食料品を調達しなければならない。ううん、どうしたものか。適当に済ませようにも、イブにカップラーメンやコンビニ弁当では流石に漫才を見ながら泣く気がする。大いに笑い、大いに泣くイブもまたらしいと言えばらしいのだが、どうにか特別な料理を食べたい。最近はUberのような宅配サービスもあるから特段焦りはないが、どうにか最適解を出したいと思う。
 家で食べられる料理かつ、複雑な調理が必要ないもの。そんなものはもう、あそこにしかない。私はキャップを深く被り、決意した。そして、高島屋の地下へと消えた。

 流石年末、地下はわんさかと人で溢れかえっていた。その奥を見ると、キラキラと輝く料理が並んでいる。私はクリスマスイブの食事を、ここに売っているものだけで自分なりのコースにして食べようと思う。
 まずは前菜。やはりサラダといえばここだろう。私は迷いなくRF1の列に並んだ。RF1とは、主に野菜を多く使った総菜を取り扱う、デパ地下で見ないことはないと言っても過言ではない有名店だ。ここなら間違いない。
 しかし列に並んだはいいが、まだ商品をちゃんと見れていない。基本的にデパ地下はショーケースの前に列を作るため、(人の壁が出来てしまって)並んでからでないとちゃんと商品を確認できない。人気店なら猶更だ。それでも私の前に並ぶ人たちは、流暢に欲しい商品を口頭で伝えている。よくもまあ簡単そうにやるもんだと感心した。普通、こんなにも魅力的な料理を沢山並べられたら、短時間で決められないだろう。それなのに、子供もお年寄りも商品をすぐに決めているのは何故だ。子供がゆえ雑念が少なく、純粋に食べたいものを決められるからなのだろうか。お年寄りは積み重なる経験を頼りに、予め目星をつけられるからだろうか。私は来た道にも行く道にも嫉妬しながら、何とかホタテと甘エビのサラダを買うことに決めた。
 100グラムでは少ないかなと思い、「200グラム下さい」と店員に言うと、店員は上手い事要望に合うように重さを測り出した。211グラムと表示され、「これでいいですか」と言われたので、頷く。
 値段は1413円。覚悟してたもののやっぱり高い。デパ地下の商品はこれが怖い。グラム換算という甘い罠にかかり、いつの間にか札が飛んでいく。値段とカロリーのグラム表示は絶対に許してはいけない。

 次はスープ。これに関してはまあレトルトでいいだろう。私は早速スーパーエリアに行き、「ステーキのあさくま」のコーンスープを手に取った。
 余談だが、デパート内のスーパーや高級スーパーで何かを一個だけ買う時は、なんだかとんでもなく恥ずかしくなるのは私だけだろうか。今回はコーンスープを一つだけ買って、今まさにレジを打ってもらっているわけだが、おばさん店員がマスクの下で薄ら笑いを浮かべているのではないかと気が気でならない。コーンスープだけ買う人間なんて、正気じゃないだろうし、私にもそれくらいわかる。コーンスープだけを買う人間はあざ笑われるべくしてあざ笑われるのだ。でも、クリスマスくらいはコーンスープだけを買っても許してほしい。私にとっても、誰にとってもクリスマスとコーンスープは特別なのだから。

 その後、から揚げとレバー等の焼き鳥串を数本、それと炊き立てのおこわ、モンブランを買い、帰路についた。
 和洋折衷が過ぎるが、料理の種類的にコースといえないことも無い。相性については全く考えていなかったものの、好物ばかり買えて満足だ。さあ、来るべき日が楽しみでしょうがない。私は私にとって、誰よりも充実したクリスマスが過ごせる自信がある。まあ問題が一つあるとするならば、これらの商品はスープ以外「本日中にお召し上がりください」と書いてあるため、一緒にクリスマスイブを迎えられないことくらいだ。南無三。
 結局当日の飯をどうすべきか改めて考える必要があるのだが、クリスマスキャロルが流れる頃には君と僕の答えもきっと出ているらしいので、まあその時を待とうと思う。

 

こんなところで使うお金があるなら美味しいコーヒーでも飲んでくださいね