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シリーズ・新しい教育を雑に考える【番外編1】

今回は動画のご紹介。
お話がおもしろすぎる。

あるていど学びに携わっている人なら「失敗する価値」みたいなものを、誰もが理解していると思う。
「失敗から学ぶ」というのは文字面だけをみて語りがちだけど、この「東山を気楽に迷う話」は異常にわかりやすいね。
お話のうまい人だったんだなあ・・・。

以下少し抜粋しておきます。
時間のある方は視聴してみると良いかと。

以下抜粋

「どうしたら算数・数学が好きになりますか?」と聞かれることがよくあるが、ちょっとしっくりしない。
若い頃、映画や芝居が好きでよく観に行っていた。
あれ、観ない人は観ないですよね。
「どうしたら映画が好きになりますか?」「どうしたら芝居が好きになりますか」というのと、
「どうしたら数学が好きになりますか?」というのと、そう変わりないと思う。
好きになりだすと好きになるし、嫌いになりだすと嫌いになる、というのはあって、数学は特にそれが目立つ気がする。
よくこういうたとえ話をする。
僕は京都をよく知ってるから、東山を歩くときに観光地図通りの道なんか行く気はない。
ただ、隅から隅まで知ってるわけではないので、道に迷ったりもする。
でも、なんぼなんでも東山でクマに食われることもないので、気楽にウロウロしているうちに「あ、こんなとこに出た」とか、迷ってちょっと楽しい、という事がある。
清水寺に出るつもりが祇園に出る、という程度の間違いはあるが、なんぼなんでも反対側の山科の方に出ることはない。
これは東山をよく知っているからで、そうやって「迷ったらいいし、間違うたら間違うたで楽しいな」とやってるうちに、どんどん山の感じがつかめるようになる。

ところが、東山を知らない、初めて京都に来た人なんかは「地図通りの道を外れたら何が起こるかわからん」と出来るだけ地図からはずれまいとする。
うっかり道をはずれたら「これはおもしろい経験だ」と思って楽しんだら良いのに、楽しむゆとりがない。だから何とかして正しい道に戻ろうとする。せっかく迷っても、山の感じがつかめない。
実は山の景色がだんだんわかるということで、正しい道もだんだんわかるというふうに関係しているのだが、正しい道を歩むことだけを考えていると、つらいものがある。

得意であれば気楽に迷えるし、不得手になるとますます固くなって、迷えなくなる、という傾向がある。

こういう話をすると「気楽に迷う、自由に動く、というのは大学に入ってからにしてもらって、小学校の間はきっちりした道をきっちり歩くことが一番大事だ」とか言う人がいるが、大学教授としては迷惑だ。

東山なら遭難しないが、信州の山に行ってから「自由に歩け」なんて言われたら、クマに食われてしまいますがな。

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前、中学生としゃべってたらね、
「うちの父ちゃんも母ちゃんも、連立1次方程式なんか解いているのを見たことがない。なのに、なんで僕は解かねばならないのだ?」
言うてむくれてる子がいたんですよね。
で、しゃあないですからね、
「そうよそうよ、大人になったらめったに解くことないんやから。解くんやったら今のうちやないか」
と、こう言うて、そしたら何となく納得してたトコがおかしかったですけどね。

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数学少年、パズル少年が数学者に向くかと言うと、また別の話。
オタクっていうのは、世界を閉じることによってディテールに凝るクセがありますよね。
世界を閉じないとパズルにならない。
ところが職業的な数学者というのは、同時に世界を開くことが要求される。
世界を閉じることと、世界を開くことのバランスが当然必要になってくる。

よくお母さんなんかが言う「机に向かって一生懸命勉強したらいい」ってのは、あやしいですよね。
ある所で、
「集中力が大事や大事や言うけど、ひょっとしたら『分散力』のほうが大事ちゃうか?」
という議論になって、数学者仲間では、そうだそうだ、という意見が多かった。
集中ってのは、世界を閉じてパワーをぐうっと出す。
例えば入試なんかではしょうがない、決まった時間にパワーを出さないといけないから。
ところが、世界を閉じると新しいアイディアはやっぱり入ってこない。世界を開かなきゃいけない面がある。

僕自身の若い頃の体験で言うと、面白いアイディアがひらめいた、という記憶が二つあって、
ひとつは映画を観てて、ラブシーンの最中にフッと思いついたっていうのと、
もうひとつは銭湯で、倶利伽羅紋紋のお兄さんが入ってきたときにパッと思いついたっていうのがある。
その時「EUREKA!」言うて飛び出さんかったんか?、とからかわれましたけど(笑)

[2018.06.08 facebookから]

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