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シリーズ・新しい教育を雑に考える【2】

数学の学習に絞って考察を続ける。

前回の振り返り
・これまでの黒板板書、講義形式の授業の目的は「ある技術の理解と習得」であった
・最短距離で技術を理解し習得するには、話し合いではなく、一方向の講義形式のほうがコスパが良かった
・よって授業中は「集中して聴く」ということが求められた

これが我々が一般的に考える「授業」というものの基本ではないかと思う。

教師→生徒、という一方向の授業のメリットは、生徒に有無を言わせずに習得してほしい技術をダイレクトに伝達できるところだろう。

我々のなかに、どうしても九九を覚えたくて覚えたくて震えてたヤツが何人居るだろうか?
三角形の面積を求めたくて求めたくて震えてたヤツが、
りんごとみかんを何個ずつ買ったか、
兄がいつ弟に追いつくか、
何分後に水槽がいっぱいになるか、
何年後に父の年齢が子の年齢の3倍になるのかを、
知りたくて知りたくて震えてたヤツが何人居るだろうか?

ほとんどの小学生は円周が何センチかには興味がない。
知りたいとも思っていない。
ではなぜそれを計算する技術を学び、練習するのか?
そこにこの一方向授業の強さがある。
何の動機づけもせずに、子どもたちに一方的にその技術を植え付けられるのだ。

でも、押し付けだと、大半の子は嫌になるのでは?

そのとおり。このような一方向授業では内的な動機づけがほぼできない。
そこで同時に
「正解することはすばらしい」
という価値観を植え付けた。
これがとても上手いところである。

「○は良いこと、×はダメなこと」と教え、
正解を出せる生徒を褒め(それは例えばテストによって行われる)、
「技術を習得し、正解を出せたこと」それ自体を快感にしていく。
これを幼少期からどんどん繰り返すことで、
子どもたちは、「○がもらえて嬉しい」という外的な動機で学習をするようになる。

事実、小学生の多くはある時期まで算数が好きだ。
「なぜ算数が好きなのか?」
と、私はこれまでにおそらく100名以上の小学生に聞いている。
答えのほとんどは、
「問題が解けた時に気持ちがいいから」
というものだ。

ここにこの一方通行型の教育の限界がある。

もうおわかりだろう。
小学校5、6年から、中学1、2年にかけて、
算数はぐっと難易度を増し、数学という新しい世界に突入する。

ここで
「解けるから楽しい」
という理由で算数が好きだった子どもたちの多くが、ふるいにかけられて脱落する。
彼らにとって算数数学をやる動機は「解ける快感」その一点だった。
それが、解いても解いても正解が出せず、×ばかりついて返ってくるようになる。
そもそも、どうやって正解を出すのかすら、授業を聞いていてもわからない。
正解が出せない以上、それを学ぶ意味も価値も意欲もなくなってくる。

けれども、学校では数学の授業が続く。

これは苦痛だろう。

そして、
「因数分解が何の役に立つの?」
「サイン、コサインなんか、社会に出て使わないじゃん」
という数学アレルギーの子供が増えていく。

もちろん、ある程度「習得力」(あえてそう表現する)のある生徒は、ふつうに技術を習得し、
サクサク問題を解けるようになるまで練習するので
「解けて気持ちいい」
という快感は一応継続するようになる。

ただ、そういう生徒の割合は、中3で3割、あるかないか、ではないか?というのが私の体感。
日本中の中3全員にアンケートしたら、7割ぐらいは数学が嫌いなはずだ。
理由は
「難しい」
「つまんない」
「解き方がわからない」
「学ぶ意味が不明」
という感じだろう。

だが、旧型の一方向授業はそれも見越している。
中3時点で、この7割の脱落者も込みで、それでも、ドロップアウトするまでに、

・九九や最低限の加減乗除、
・最低限の単位量的発想(例えば肉の値段を100gあたりで表示するなど)、
・秒、分、時、日、週、月、年、などの時間的長さの変換
・面積、体積などの考え方や各種単位の意味、

などを身につけさせる。

一方向がすべてダメというわけではなく、
こういった一方向、強制的に流し込む教育、のおかげで、
おそらく日本は、数をつかう力において、平均的にそうとうハイレベルな国だと思われる。

そして、中3まで数学からドロップアウトしない3割の中からは、
理系の学習を継続して、大学でよりハイレベルな数理技術を学ぶヤツが出てくる。
その一握りが、社会で活躍し、企業や国に貢献し、発展させていく。

日本国家としてはこれで十分であり、
詰め込み教育の何が悪いか?
という時代が、昭和であったのだと思う。

そして、今、昭和は過ぎ去り、平成の時代が終わろうとしている。

つづく

※追記コメント
そういや、すごい雑な意見だけど、小5の三学期に学ぶ「割合」は、ガチ目に小6や中1にも継続して教科書にいれたほうが良い、全く同じ内容でいいから。
割合のことをまともにわかっている小6や中1、いや、中3も、ほとんどいない。

なぜ、比較対象2つを割り算にかけるのか、そこを連中が体感できるまで、なんどもなんども、しつこくやる必要があると思うね。

[2018.05.06 facebookから]

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