サイダーを一気に飲み干した。
夏が嫌いだ。
歴史の授業でよく耳にした“遊牧民”というのは、とくに気温差が激しい砂漠地帯に多く分布する民族である。なぜ移動するのか。そう、生きるためである。ノマドワーカーとかそういった次元で生きてはいない。彼らは生きるのに必死なのだ。「じゃあ、どうしてそこまでして移動を繰り返すんですか?」と思ったとしても、北海道民に「寒いのにどうして引っ越さないんですか?」と同じくらい愚問なのである。生まれた時からその生活が当たり前にあるからである。
梅雨冷えから、ジリジリと押さえつけるような不愉快な暑さに切り替わった頃、Lv.1のチンピラな僕(YouTube広告でみるあのゲーム)は品川のコンビニにいた。
僕は片手にサイダー1本だけを持って並んでいた。会計を終え店を出て空を見上げると雲の峰が並んでいた。その空の下で僕はサイダーを一気に飲み干す。暑さで疲れ果てた僕の身体がジュワーっとみなぎってきた。タイムラプスのように流れる町の中で、僕は1人ゆっくりサイダーを飲み干す。低価格で済む暑気払いだった。こうして僕は今日も1日頑張っている。暑いのを夏のせいにしてごめんね。という気分に苛まれる。
「今日が最高だった」という日が毎日続けばいいな。そう思った僕は足取りを浮かせて今日も歩いていた。
先日、Twitterとnoteで仲良くしてくださってるフォロワーさんと通話した。
いつもどんな話をしているかといえば、共通した話題になることが多い。
Twitterで気になるユーザー、癖すご動画、読書、音楽の話になる。
僕はChilli Beans.というバンドをオススメした。タワーレコード2022年7月度のレコメンに選ばれているだけあって、客観的にもオススメに値する。3人組ガールズバンドで、曲もメンバーもオシャレでとにかく激エモだった。
僕は最近、詩集も読み始めた。文章の幅を広げたいと思ったおりに、手軽に読めそうだからである。
その中で萩原慎一郎『歌集 滑走路』を読んだ。
まず著者について説明しないといけない。この萩原慎一郎という方は、2017年にわずか34歳という若さで亡くなった詩人である。中学から高校にかけて長期的ないじめが原因で心身に不調を患うようになる。高校生のときに出会った俵万智に影響をうけ、短歌の創作を始める。
大学卒業後はアルバイトや非正規の仕事をしながら精力的に創作活動をしていたが、『歌集 滑走路』を脱稿した後、心身不調を理由に自殺した。
こうした著者のバックグラウンドを知ると、この『歌集 滑走路』に収録されている歌がより深い趣が出てくる。
僕がオススメするものに興味深そうに聞いてくれて、話している僕も興がのってくる。
このフォロワーさんと何回か通話をしているが、何回目であっても新鮮で、楽しく会話ができるここ余地良さがいい。SNSの世界は広しといえども不思議な縁を感じている。
この日もめちゃめちゃ暑ぐるしい日だったが、よく眠れた夜だった。
暑い日のご褒美は決まってサイダーにしている。職場の同僚は家飲みの1杯が良いと言っているが、酒に溺れる夜は好きじゃない。
炭酸が身体にめぐる感じと1日の疲れが一気に取れるから好きだ。サイダーの一泡ごとに哀愁漂う。その泡が喉を通り過ぎるとき、この一夏過ごせそうな気がする。
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