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<映画レビュー>MyFFF2023より「海辺の女」UNE FEMME A LA MER 

毎年この時期は、オンライン映画祭「マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル(MyFFF)」をチェックしている。
MyFFFはフランス映画を中心に紹介するオンラインのイベントで、
2020年にコロナ禍で開催された「おうちにいよう MyFFF STAY HOME EDITION」をきっかけに知った。

今年は出遅れてまだ1作しか見れていないが、それがかなりの当たり作品だったので記しておきたい。

「海辺の女(原題:UNE FEMME A LA MER、英:Out of the blue)」
監督はCéline Baril、主演は「あのことL'événement」にも出演しているLouise Chevillotte。30分ほどの短編で、気軽にYoutubeでも見ることができる(Youtubeでは英語かスペイン語しか字幕設定できないので注意)。

アナは海水浴中に恋人トマスがクラゲに囲まれる悪夢を見る。悪い予感を拭いきれない中、アナはトマスと旅を続けるが、たまたま出会った少女が付けていた浮き輪が海辺に浮かんでいるのを見つける。アナは居ても立っても居られず少女の身を案じて安否を確かめに、恋人を置いて様々な場所へ探しに行く。その過程で彼女が見つめ直したものとは。

あらすじ

作品の主題としては、アナとトマスのカップル間の関係性の変化。YouTubeのインタビューでは、監督のCéline Barilが作品について、片方が気づいていないうちに恋が終わってしまうのを描きたかったと話している。Baril自身、トルコ人とのハーフで18までイスタンブールに住んでいたとのこと。

主人公アナはヨアヒム・トリアー「わたしは最悪」やノア・バームバック「フランシス・ハ」で描かれているような気ままで自由奔放、でもプライドはちょっと高め、といった女性像(理性的な恋人とは対照的に描かれる点は少し「わたしは最悪」にも似ている)に重なるように思える。ラストのテーマもこの作品群と同じような文脈で捉えられるだろう。

本作はとにかく、ストーリー展開と全体の雰囲気が好きだった。
ビフォア・サンライズにも通ずる、長回しで描かれる時間の流れに身を任せるような旅の仕方とその先にある自己発見。
異国の地を旅する中で、ある意味最も頼りになるツールが直感だということにも強く同意する。
始まり方から想定されうるような展開を、良い意味で裏切り続けられ、
鑑賞後はなんだかとても良い作品を見たな、という非常にふわっとした感覚のみが残る。

観た直後に普段使っているツールであるFilmarksにマークしようと思ってアプリを開いたが何故かページが無い。が、どうしても覚えておきたくて初めてリクエストまでしてページを作ってもらった。
できたてほやほやのページを眺めていると、改めて「海辺の女」という素っ気ない仏語からの直訳タイトルを見ると、「Out of the Blue」の素敵な英題が際立つ。アートワークも、ラストも、ストーリーをも体現するのは圧倒的に「Out of the Blue」の方がふさわしいと思うけれど、この訳はどういった経緯で決まるのだろうとふと思った。
いずれにせよ、Céline BarilとLouise Chevillotteの今後の作品には注目したい。

そして本作を見て、パンデミックのせいで幻に終わったトルコ旅行に思いを馳せる。
今は地震で大変な状況にあるが、募金やら自分に出来ることをして、
いつか実現させたいものだ。


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