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tokyo tower

私は夏になるとこの映画のことを思い出す。

原作は江國香織さんの小説である「tokyo tower」だ。

この映画は、人妻の詩史(黒木瞳)と大学生の透(岡田准一)が禁断の恋をしてしまう物語である。かの有名な「恋はするものではなく、落ちるものだ」という言葉産み出した作品である。

詩史はエリートの旦那をもち、自分自身もセレクトショップを経営し、一見誰がみても憧れる人生を送っていた。そんな中、お店に友人が遊びに来た際に息子を紹介される。それが透である。二人はすぐに恋に落ち、周りに隠れて会うようになる。連絡は決まって詩史の方から都合のいい時間にかかってくる。決して自分から連絡することを許されず、詩史に教えてもらった、彼女が美しいと定義するものの中に囲まれた部屋でずっと彼女の連絡を待ち続ける透の姿はなんとも儚く美しい。

透の夏休みに詩史は葉山の別荘へ誘う。詩史と初めてゆっくり時間を過ごし、無邪気に喜ぶ透の姿は心苦しくなるほど愛おしい。二人で特に何をするわけではなく、広く真っ白いベッドの中で抱き合って話をするシーンは不倫だということを忘れてしまうほど純愛で美しい。世間では年の差の恋愛はどちらかが本気ではなく利用していると思われがちだ。しかしここでは二人の美しい雰囲気からそんな後ろめたさは一切感じない。二人だけの世界で、二人だけが理解して、お互いを大切に愛し合う感じがただただ美しい。

しかしそんな二人の秘密は長くは続かず、詩史の旦那と透の母親にバレてしまい二人は別れることになる。透は悲しみのあまり、フランスのパリへ留学へ行ってしまう。詩史の旦那は今までのことは水に流しやり直そうと提案するも、詩史は受け入れなかった。旦那と一緒にいれば、今まで通り裕福な生活や自分のやりたい仕事も続けることができる。しかしそんな生活を全て捨て離婚という道を選び、パリにいる透に逢いに行く。

二人はパリで再開を果たします。

「明日あなたの気持ちが離れても愛してる」

と詩史が気持ちを伝えます。この言葉を含めどこまで美しい言葉を生み出す物語なんだと思わせられます。今までは透が思いを伝えるシーンばかりでしたが、ここで詩史の愛をちゃんと言葉にして感じることができます。

こんな非現実的で美しい映画が、東京の夏の夜にぴったりではないでしょうか。理屈では片付けられない愛は今日もどこかに存在していす。生涯で、こんな自己中心的になってみたい恋がいくつあるのでしょうか。ぜひ夏の夜にちょっとしたスパイスを。


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