サウジアラビアで絶望してタイで泣いた リヤド,サウジアラビア
3週間ヨーロッパに滞在した後、僕は飛行機を5回乗り継いで日本に帰ろうとしていた。
なぜなら、学生でお金がないから。
いかに安く帰れるか、航空券を調べに調べた結果、
チェコ→イタリア→サウジアラビア→インド→タイ→福岡のルートにたどり着いた。
今考えてもさすがにハードすぎるフライトスケジュールを組んでしまった。
しかも、ちゃんと悲劇は起きた。サウジアラビアで。
イタリアのナポリからサウジアラビアのリヤドに行く予定だったのだが、毎度のように飛行機が遅延。
ここまですべてのフライトでLCCを利用してきたが、もうLCCの遅延は当たり前だった。
サウジアラビアのリヤドで乗り換えて、インドのムンバイに行く予定。
しかし、乗り換え時間が2時間40分と短かったため、この旅で1番の勝負になることは事前に覚悟していた。
そして、ちゃんと飛行機が遅れたため、僕は機内でめちゃくちゃ焦っていた。
イタリアとサウジアラビアの時差は2時間、到着予定時刻より1時間半ほど遅れて飛んでいる。
もしこの飛行機を逃したら、サウジ→インドとインド→タイの2本のフライトを逃すことになる。
お金と時間を無駄にしてしまうかもしれないという恐怖と緊張で、とても焦っていた。
隣の客に「21時半の便でトランジットしないといけないんだけど、あまり時間がないから着いたらまず俺を通してくれ」とめっちゃわがままなことを言うぐらい焦っていた。
その客は承諾してくれてはいたが、なぜか不思議そうな顔をしていた。時間はあるじゃないか?みたいな感じで。
だから、僕は念の為イタリアとサウジアラビアの時差を聞いてみると、なんと1時間だけだった。飛行機で6時間移動するのだから時差は2時間はあるだろうと勝手に思い込んでいたが、まさかの1時間。
ということで、何とか間に合いそうな時間でリヤドに到着した。
が、再び問題が。
実は、サウジアラビアはトランジットだけでもビザがいるらしい。着いたらトランジット用の通路で次の搭乗ゲートまで簡単に行くというプランは崩壊し、脳内には飛行機を逃すという最悪のシナリオが浮かぶ。
スタッフに聞いても、あっちにいけ、あっちにいけとたらい回し。
ようやくイミグレーションについたと思ったら、大量の人が待機して中々通れない。どうやら彼らもビザがいることを知らずにリヤドに着陸してしまったらしい。
イミグレーションではトランジットビザを買わされたが、正直何円払ったかも分からない。サウジアラビアの聞き馴染みのない通貨単位は不気味だった。それを円に換算して考える余裕もなかった。
ただ、このとき同じ状況にいたイタリア人の青年が3人いた。彼らも僕と全く同じルートでタイを目指しており、同じようにトランジットビザのことを知らなかったようだ。
イミグレーションを過ぎたあと、ダッシュで搭乗口に向かう。
荷物検査には多く人が並んでいるが、事情を説明して先に行かせてもらった。
安堵したと思ったらまたすぐにトラブル。心も体も疲れ果てていたが、なんとかギリギリで出発時間に間に合った。
でも、これでインドに行ける。そして、タイにもいける。
行けなかった。
あとはもうチケットを見せて搭乗するだけってときに、ビザを見せろと言われた。
頭が真っ白になった。
トランジットをするだけなのにインドでもビザがいるのか、、、
早口で説明されたのでよく聞き取れなかったが、インドは空港によってはトランジットビザがいるとかないとか。さらに航空会社によっても違いがあるとかないとか、そんなことを言われた。
結局、インド行きの便に乗れなかった。
そして、あのイタリア人の3人も乗れなかった。
最悪の気分。
サウジアラビアの空港は対応がとにかく冷たい。
ビザがないと分かったら、一言も口を聞いてくれない。当然、これからどうしたら良いかも何も教えてくれない。
そして、これから地獄のような時間が続く。
やっとの思いでサウジに入国できたと思ったら、今度はサウジから出られない。絶望を感じながら泣きそうになりながら、日本に帰る方法を調べる。
2日後にタイから日本行きのチケットを取っている。タイに行くにはインド経由かオマーン経由の2つがあった。また、フィリピン経由で日本に帰る選択肢もある。
フィリピン経由で日本に帰るのが1番安かったため、急いでチケット購入を試みる。しかし、クレジットカードが使えない。何回も何回も挑戦しても、購入ができない。
なぜか持っていたクレジットカードは2つとも使えなくなり、家族に電話して家中のクレジットカードを試したがどれもだめだった。
原因はいくつか考えられるが、一つは通信速度だ。サウジの空港のWi-Fiはとにかくショボい。しかも、Wi-Fiの設定がめんどくさすぎる。
だから、サウジでトランジットする人は万が一に備えてe-simなんかを買っておくと良いかも。
これで全てのクレジットカードが使えなくなった。
次に考えたのは、空港内のチケットカウンターで現金で直接購入する方法。サウジのリヤドの空港には一回にチケットを売っている場所がある。
しかし、これがまたぼったくりすぎた。
ネットで検索したチケットを見せて、これが欲しいと伝えると2倍の値段で売ってくるのだ。
なぜと聞くと手数料だと言われた。しかもエコノミーが残っているのに、50万くらいのビジネスクラスを売ってくる。
もうこのときにはサウジアラビアが大嫌いになっていた。
意地でも払うか馬鹿野郎と思いながら、そして絶望しながら、どうにかチケットを買う方法を考える。
時刻は深夜3時になっている。
またチケットの購入とは別にやらなければいけないことがあった。それは留学先の寮の申請だ。
9月から韓国に留学する予定だった僕は、朝8時(サウジ時間)から寮の部屋の申し込みをしないといけなかった。
僕はデンマーク人と相部屋になる予定だった。そのため、デンマークとサウジアラビアと韓国の時差を考えて、同じタイミングで申請をしなかればならなかった。
デンマークとサウジアラビア、韓国の時差を頭に入れながら、オマーン経由でタイに行くチケットの購入方法を模索している。
もう頭がちぎれそうだった。
正直、しんどさだけで言ったら人生で1番しんどかったかもしれない。
どうしたら良いのか。選択肢が何も見つからない。
それでも帰らなければいけない。昨日からほとんど食べていないし、空港の食べ物は高すぎて食べる気にもならない。寝てもない。
そして、いろんな方法を調べながら、たどり着いたのは代理店を使うことだった。
スカイスキャナーで調べたら、トリップドットコムなどの代理店での値段が表示される。僕は今まではそういった手数料を省くため、スカイスキャナーで検索した後は、航空会社から直接チケットを買っていた。
代理店であればクレカ以外の決済方法があるかもしれないと思い、祈るようにトリップドットコムの決済画面を開く。
すると、クレカ決済以外にLINE Payで支払う方法があった。
これだ!
LINE Payには残高はなかったが、銀行口座と紐付けていたためなんとか入金することができた。
これでやっと帰れるかもしれない。
ついに、オマーン経由でタイ行きのチケットを購入した。
値段は5万円。僕にとってはめちゃくちゃ高いが、それも安く感じるくらいな精神状態。
もちろん、オマーンでもトランジットビザが必要だったらどうしようと最悪のケースが頭をよぎる。信用できそうなサウジアラビアの空港職員に「オマーンはトランジットビサはいらないよね?」と何度も何度も聞いた。
そして、夜の21時の便を待つ。こんなにも1日が長く感じたのは初めて。サウジアラビアのあの独特な雰囲気に包まれた空港で不安に怯えながら時間を過ごした。
あの見たこともないアラビア文字が、また絶妙に怖い。
カウンターでチケットを受け取ることができた。
チケットカウンターの列に並んでいるときから、なぜかインドネシアのおばちゃんがずっと着いてくるという別の恐怖も発生。
そして、当たり前のようにオマーン行きの飛行機は遅延。
予定よりも3時間も遅い、深夜0時にやっとサウジを飛び立つことができた。
気づけは27時間も空港にいた。
オマーンにはオマーンエアーを使っていった。LCCではない飛行機だったから座席の前に液晶がある。それに感動すら覚える。
背もたれも倒せて、毛布も配られた。
思い返せば大学生になってから50回以上は飛行機に乗っているが、オマーンエアー以外は全てLCCだった。
普通の飛行機はこんなに快適なのか。感動。
オマーンのマスカット空港に着いた。サウジのリヤド空港とは違った雰囲気があった。
オマーンに行く前にずっと着いてくるインドネシアのおばさんからパンとミカンをもらったので、それを食べた。
もう少しでタイに着けるかもしれないと思うと勇気と食欲が湧いてきた。
マスカット空港というフルーツチックな空港で、ケンタッキーを食べた。
この空港では8時間ほど滞在したが、もう8時間が短くさえ感じてくる。
タイにも、またオマーンエアーで行く。
タイの首都であるバンコクには、2つの空港がある。
ひとつはドンムアン空港で、市街地まで電車一本で移動できる便利な空港。もうひとつは、スワンナプーム空港で表記はBKKとバンコクの頭文字が使われているのだが、バンコクに行くにはちょっと不便なところにある。
僕はスワンナプームに行った後、ドンムアンに移動して日本に帰る予定だった。
ちなみに、このようにBKKからDMKに移動したい人は無料のシャトルバスを利用すると良い。
航空チケットを見せて、乗り換えることを証明すれば乗ることができる。
バスは30分に1本程度で、移動時間は約40分といったところ。
スワンナプームに着いた。そして、ドンムアンに移動する。
バスから見える大雨と大雷のバンコクとは対照的に、やっと晴れてきた僕の心。
ドンムアン空港についてやっと一息。
見た目でソーダ系の乳酸菌飲料だろうと分かるような飲み物を飲んだりした。
また、そこで母にLINEをした。
「心配をかけてごめん」と。
その返事が、
「元気に帰って来れば問題なし😊。すべて自分で決めて、トラブルがおきても対処していくその力、誰にでも出来ないよ。すべての経験があなたの力になるね、頼もしい息子です👍」
だった。
泣いた。笑
こんな精神状態でこんなことを言われると人は泣くらしい。
これは、自信になった。
こんな経験をした人はいると思うけど、誰もが経験することではない。
そして、自分はこのレベルの問題までは対処できるんだと分かった。
この先に辛いことがあっても、なんだかんだやっていけそうな希望になった。
絶望から希望を得たサウジアラビアでの話。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?