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【読書感想】木は会話する。森によって人類は救われるのか?


NOTORI農鳥です。

自然との共生。日本も古くから自然の中で暮らし、その恵みを享受してきました。


今回紹介するのは、カナダ・ブリティッシュコロンビア州を舞台に、森を愛し、菌を愛し、家族を愛したある森林生態学者の自伝的ストーリーです。


〜あらすじ〜


大学卒業後、地元の森林局の造林研究員として勤務する著者は、仕事をこなしていくうちに、自生する樹々を切り倒して効率的・工業的に生産できる種別を植林したり、皆伐(対象となる植林区画にある樹木等を全て伐採する方法)などの従来の森林管理やその手法に疑問を抱く。そうした中で「樹々が地中の菌類ネットワークを介してつながり合い、互いを認識し、栄養を送り合っているのでは?」との彼女の考えのもとに菌類ネットワークと樹々成長の関係性を実証すべく、研究を重ねていく。研究者として、女性として、母親として、樹々とともに生活する彼女の成長と葛藤が描かれる。



本書の魅力は、彼女が積み重ねてきた研究の学術的価値に焦点が当てるだけにとどまらず、彼女の人生を通して見る人間の生き様や長い年月をかけて過酷な環境にも耐えうる術を得た樹木や菌類の生き様が刻々と描かれているところであり、まるでNetflixのドキュメンタリーを見ているかのように印象深く描かれています。

実験とデータ採集に明け暮れる日々が描かれる中にも、家族との触れ合いや諍い、子供の頃の自然との思い出、パートナーとの生活、研究者そして女性としての苦悩や葛藤などが赤裸々に描かれており、小説仕立ての文体が読みやすく500ページ超のボリュームを感じさせません。


まとめ

その後の森林生態学に多大な影響を与え、彼女の論文は世界中の研究において数多く引用されているそう。研究成果を語ったTEDトーク「森で交わされる木々の会話(How trees talk to each other)」も大きな話題を呼びました。

自然から感じることは世界共通です。都会の喧騒や複雑化する人間関係から離れて自然の中に身を置き、今一度思考を巡らせるのも現代人には必要かもしれませんね。

今回本書を読んでみて、今更ながら「本」「読書」は素晴らしいなと感じました。単にモノゴトの知識を吸収するだけでなく、住む場所も環境も言語も文化も違う人の思考をたった数千円で知る事ができる事がどれだけ貴重なことかあらためて身に沁みました。これからも好き嫌いせず読書と向き合いたいなと思います。


それではまた。


『マザーツリー 森に隠された「知性」をめぐる冒険』
著:スザンヌ・シマード 訳:三木 直子
2023年、ダイヤモンド社


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