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コーヒーの“微粉(びふん)”を考える。

こう言うのは勢いが大切。
記事を書くネタと気力が湧いてきたらどんどん書いてしまうのが吉です。

さて、前回の“追い焙煎(焼き直し)”の記事はお読み頂けましたでしょうか?
様々なものが値上がりしている昨今、嗜好品であるコーヒーも含め、食品のロスはなるべく避けたいものです。

そこで今回は、時と場合によっては厄介者扱いされ、なんなら捨てられてしまう事もある“微粉(びふん)”(コーヒー豆を挽いた際に出てしまう意図しない極小サイズの粉)について、僕なりの考察を交えてお話ししたいと思います。

そもそも微粉(びふん)とは?

まずは“微粉(びふん)”とはなんぞや?から簡単にお話ししたいと思います。
冒頭でも少し触れたように『コーヒー豆を挽いた際に出てしまう意図しない極小サイズの粉』と表現していますが、広義の意味では“狙った挽き目よりも細かくなってしまった粉”も、まるっと一括りにしてしまって“微粉”と呼ぶのかなぁと思います。

これはコーヒー豆に限った話ではなく、岩石でもクッキーでも、比較的硬いもの破砕する(割砕く)際に出てしまう粉のような破片という風にイメージしてもらうと分かりやすいかも知れません。

特にコーヒーは複雑な形状の刃をしたミル(グラインダー)で細かく破砕される過程で例外なく微粉が発生します。
無論、性能の良い高価なミルを使えば微粉は少なくなりますが、それでも完全に無くすことは出来ません。

手挽きミルの最高峰と言われるコマンダンテ

これが後のコーヒーの抽出において、良くも悪くも様々な影響を及ぼします。

今回はペーパーフィルターを用いた透過式抽出の『ハンドドリップ』を軸に話を進めていきましょう。

微粉は悪で“敵”なのか?

巷では割と『良くない物』として扱われがちな微粉ですが、まずは相手を観察するところから始めましょう。
どんな特徴があり、どういう奴なのかを見極める必要があります。

①一粒あたりの体積が小さい為、成分が他の粒より早く溶け出す

コーヒーのレシピでは狙った味を再現するために、豆をミルで挽く際には必ず“挽き目(粒度)”を調整されると思います。
全てがその粒度で揃えば簡単なのですが、否応なしに出てしまう微粉は、一緒に挽かれた他の粒より小さい為に早くお湯が浸透し、成分の溶け出すスピードが周りより速いのです。

したがって大きいサイズの粒は抽出が終わっていないのに、微粉たちは一足先に出涸らしになってしまい、抽出の後半に出やすいと言われる雑味や渋み、エグみなどを真っ先に出してしまいます。

②ペーパーフィルターの目を詰まらせ、抽出時間が長くなる

いたって単純な現象なのですが、これこそ微粉が厄介者扱いされる最大の理由かもしれません。
挽いた粉にお湯を注ぐと、コーヒーに浸透し成分を溶かし出しながらペーパーを透過して下に落ちていきます。

微粉はその水流に乗って流され、最終的にはペーパーの内側にペッタリと張り付き繊維の隙間を埋めて目詰まりさせてしまいます。
その結果、お湯の抜けが悪くなりペーパーの内側に溜まりがちになる事で抽出時間が長くなってしまいます。

③“過抽出”を起こす原因になる①と②

コーヒーは抽出時間が長くなればなるほど、香味としてネガティブな成分(雑味、渋み、エグみ)がどんどん出てきてしまいます。
これは“過抽出”と呼ばれ、不要な成分も溶かし出してしまうのであまり好ましい状況ではありません。(逆に成分がちゃんと出ていない状態を“未抽出”と言います)

微粉においては、①と②で話したように自ら過抽出を起こしながら、ペーパーを目詰まりさせて抽出時間を長引かせるという、『無駄な仕事を増やして、無理やり残業をさせようとするブラック企業の上司みたいな奴』と言えるかも知れません。

微粉は善で“味方”なのか?

ここまでは暫定的に敵と見なしボコボコにしてきましたが、一旦落ち着きましょう。
よくよくよーく観察すると、もしかしたら“実は良い奴だった”みたいな事があるかもしれません。

長所と短所は表裏一体

まず前項の①で、『微粉は粒が小さいから成分の溶け出すスピードが早い』と言いましたが、これは言い換えると粒が小さければ『それだけ成分がよく溶け出す』というメリットとも捉えられます。

ゆえに、細挽きにすればするほど成分の抽出効率が良くなり、コーヒーの濃度が濃くなります。

しかし、全てを微粉くらいの細挽きにしてしまうと味が濃く出でる反面、粉同士の隙間が無くなる事でお湯の抜けが悪くなり、さらにフィルターが目詰まりする原因になるなど、抽出時間は長くなる一方なので、より一層過抽出を起こしやすくなるというデメリットになります。

逆に微粉を徹底的に取り除き、かつコーヒーを粗挽きにした場合は、粒同士の隙間が大きくなることでお湯抜けが良くなり、フィルターは目詰まりしないので抽出時間は極端に短くなります。
これは先ほどとは反対に“未抽出”になりやすくなるというデメリットになります。

通称“微粉シャカシャカ” 案外な物だと1500円前後で買う事ができます。

これは前項②で話した『フィルターの目詰まりを起こす』という欠点とも言えるべき現象を逆手に取り『微粉がある事で、程よくお湯持ちが良くなり抽出時間が伸びる』というメリットとして捉えられます。

このように、見方を180度ひっくり返すと『実は微粉っていい奴だったんじゃないか...』となる訳です。

微粉の役割と存在意義

これまでの話から微粉はまるで少年漫画のように、『最初は相容れないライバル同士だったが、最後には友として共に戦いラスボスを討ち倒す』ような胸アツ展開ですね(笑

ここまで来ると、もはや“微粉”は付かず離れずの長い付き合いの友人のように感じてきたのではないでしょうか?
微粉は単体で見るとデメリットが目立ちますが、コーヒーの抽出全体で見ると決して不要な物ではない事が分かったと思います。

全てはバランスの上に抽出が成り立ちます。

微粉は多過ぎてもダメだけど、全く無いのもダメ。
そもそも微粉だって、元は抽出に使われるコーヒーの一部だったのだから品質が悪い訳ではありませんし、捨てるのはあまりに忍びない...

なので、次は『勿体無い精神』を全開にした微粉の活用方法を考察していきたいと思います!!

【次回に続く】

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