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「スピンオフ作品」を観たい映画のサブキャラクター達

● スピンオフ映画の魅力


 フィクションを楽しんでいる最中、俺は頻繁に考える。「あのキャラクターの過去が知りたい」「あのキャラクターの活躍をもっと見たい」……。そうした欲望を叶えてくれるのが、いわゆるスピンオフ作品。サブキャラクターを主役に据えたり、作品世界そのものを改めて掘り下げたりする派生作品だ。
 本稿では主に前者、「キャラクター系スピンオフ」の映画作品に焦点を絞り語っていきたい。



 比較的最近に観た中で印象的だった例を挙げると、「イップ・マン」シリーズ三作目「イップ・マン 継承」のスピンオフ「イップ・マン外伝 マスターZ」
 本編で主人公:葉問イップ・マンと対峙し、詠春拳えいしゅんけんの道を捨ててしまったサブキャラクター:張天志チョン・ティンチの再起と活躍を描いた作品だ。本編シリーズを全く知らずとも満足できる名作アクション映画、と呼んで差し支えないだろう。

 ミシェル・ヨー、デイヴ・バウディスタら、ハリウッドでも活躍する豪華キャスト陣が揃っている。マックス・チャン演じる天志の勇姿に惚れ惚れすること必至(以下、人名敬称略)。


 これまで様々な映画作品を観てきたが、鑑賞直後に「もっと眺めていたい」「もっと掘り下げてほしかった」……等と考えたキャラクターは数え切れない。
 そんな面々の中から、すぐに脳裏に浮かんだキャラクター五名を以下に挙げる。なお俺の嗜好上、大作系娯楽映画に偏っている点はご容赦頂きたい。


●「007シリーズ(ダニエル・クレイグ版)」より「Q」


映画ナタリーより引用。この入場者特典ポスター、今更ながら欲しくてたまらない。


 スパイ映画シリーズ「007」において、主人公ジェームズ・ボンドに様々な便利アイテムを提供する科学者:通称Q。中でもスピンオフが観たいのは、「007 スカイフォール」以降に登場したベン・ウィショー版Qである。
 旧シリーズのほとんどでは「お茶目な老人科学者キャラ」だったQの大幅なイメチェン──お洒落な衣装、そして皮肉屋だが愛嬌がある佇まいに虜となった人は多いはずだ。作品を経るごとに出番も増え、ボンドに劣らぬ存在感を発揮していることに疑いを挟む余地はない。そんなQが何らかの事件に巻き込まれ、自身が作成したアイテムを駆使し、ボンドのように矢面に立って立ち向かう……といった作品が観たくなるのも当然、と言わせてほしい。
 なお、現行シリーズは「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ」をもって完結しており、次回よりボンドは新キャストが演じることが確定している。ボンド役が交代してもサブキャストは続投するケースは多いので、仮にスピンオフ主演作が作られなくても、ベン・ウィショー版Qは次回作以降も登場してほしい。


●「ジョン・ウィック:コンセクエンス」より「ケイン」

ジョン・ウィック:コンセクエンス」公式サイトより引用。


 先日公開された「ジョン・ウィック:コンセクエンス」にて、準主役的な立ち回りを見せたケイン(ドニー・イェン)。視力を失いながらも愛娘の為に暗殺家業に復帰し、旧友である主人公との敵対を余儀なくされた悲劇的な人物だ。ハンディキャップを背負ったまま知恵と工夫で殺人を遂行し、クライマックスには香港映画ばりの漢気炸裂を見せてくれた彼は、実力・人気ともに申し分なしのキャラクターだろう。これだけキャラが立っている人物を四作目にして登場させるとは、やはり「ジョン・ウィック」シリーズは侮れない。
 そんな彼の全盛期──殺し屋現役時代を掘り下げた作品を是非とも見たいものだ。殺意を全開にした全力のドニー・イェンがどれ程のアクションを見せてくれるのか?興味が尽きない。
 なお、今年「ジョン・ウィック」シリーズから派生した「バレリーナ」なる作品が公開される。こちらは本編のサブキャラではなくアナ・デ・アルマス演じる新キャラクターが主人公を務める映画ではあるが、キアヌ・リーブスやランス・レディックら、シリーズのレギュラーキャストも登場するようだ。時系列次第では、ドニー・イェンの姿を見ることもできるだろうか……?


●「モンスターハンター」より「ハンター」


スパイス」より引用。
実写版「モンハン」本編は珍妙な味の作品だったが、この二人のバディ感は割と好みだった。


 映画「モンスターハンター」作中において、米軍演習中にモンハン世界へ異世界転移した主人公:アルテミス(ミラ・ジョヴォヴィッチ)。その相棒を務めた人物が通称ハンター(トニー・ジャー)である。
 本作は異世界転移要素や冗長すぎるスパイダーパニック描写(もはやモンハンである必要性を感じられなかった)等、かなり珍作寄りの映画であったことは否めない。しかし前半部のディアブロス討伐シークエンスやモンハン世界独自の習俗描写には胸躍ったので、異世界転生要素を含めずモンハン世界だけを丹念に描き切った場合、もっと市民権を得る作品になれた可能性があるのでは?……と、ふいに考えることがある。
 その際には「モンハン世界の現地人」たるハンターの活躍は欠かせない。ムエタイを封印し、馬鹿でかい武器を携えながら巨大モンスター相手に奮闘するトニー・ジャーをたっぷり見られれば、「モンハン」映画本編を食い足りなかった俺の溜飲は下がる。その際は当然、ゲームのメインテーマ「英雄の証」も流してほしい。


●「ロード・オブ・ザ・リング」「ホビット」シリーズより「レゴラス」


シネマトゥデイ」より引用。


 大作ファンタジー小説の実写版「ロード・オブ・ザ・リング」、そして前日譚「ホビット」シリーズにてオーランド・ブルームはまさに「絵に描いたようなエルフ」のレゴラスを体現していた。
 「やっぱり武器といえば剣!弓は地味な武器!」……と信じて疑わなかった少年時代の俺は、急流を滑り降りながら弓で無双するシーンを見て「え、弓ってこんなに強いの!?」と驚愕した。主人公:フロドをはじめとしたホビット族は目立った戦闘描写がないため、彼の活躍がより際立った印象がある。
 原作小説は未読のため、レゴラスにこれ以上の見せ場が設定されているのかは判りかねるが、あの「弓無双」を再び観たい、弓の魅力をもう一度味わわせて欲しい……と感じてしまう。
 なお、オーランド・ブルームは2021年のインスタ投稿にて弓の達人っぷりを披露している。再びレゴラスとして弓を駆る姿を、つい想像してしまうのも無理はない。



●「響け!ユーフォニアム」「リズと青い鳥」より「中川夏紀」


リズと青い鳥」公式サイトより引用。
スタッフの違いゆえに「響け!」と「リズ」でデザインが異なるが、個人的にはリズ版のあっさり感が好み。


 上記の作品群とは一気に毛色の異なる作品だが、どうしても挙げさせてほしい。
 昨年、俺の琴線をひたすら揺さぶった小説・アニメ・映画「響け!ユーフォニアム」シリーズ。焦点の絞り方によって何本でも映画を作れそうな本作(そもそも「リズと青い鳥」自体、先輩キャラ2名を主役に据えたスピンオフ)であるが、中でも更なるスピンオフが観たいのは「夏紀先輩」こと中川夏紀だ。
 当初は少々ガラが悪く、練習をサボりがちで、傍観者のような立ち位置だったユーフォニアム奏者:夏紀先輩。次第に主人公に影響されて奮起し、進級後は吹奏楽部副部長を立派に務め上げることになる。そんな彼女が中心となった物語──つまるところ、夏紀先輩視点のスピンオフ小説『飛び立つ君の背を見上げる』の映画化を俺は熱望している。
 原作の空気感を表現するには「リズと青い鳥」の作風を踏襲したスタイルが合っていそうだが、山田尚子監督が京都アニメーションを退社して別会社:サイエンスSARUに移籍していること……等々の理由で実現は困難だろう。だが、卒業ライブでエレキギターを奏でる夏紀先輩を、美麗なアニメーションと共に観てみたい欲望は捨てられない。


● スピンオフ作品のこれから


 2024年の映画界は、どうならスピンオフ作品を抜きに語ることができないらしい。
 例えば、「マッドマックス 怒りのデス・ロード」に登場した隻腕の戦士:フュリオサ大隊長の過去を描く「フュリオサ」。「怒りの〜」同様、いやそれ以上の興奮と感動を届けてくれそうな予感がする。本編同様に監督を務めているジョージ・ミラーを信じるのみだ。
 また、「エイリアン」の敵モンスター:ゼノモーフ(=エイリアン)の恐怖を再び描く「Alien:Romulus(仮題)」も既にクランクアップし、今年公開されるらしい。手掛ける監督は名作ホラー「ドント・ブリーズ」のフェデ・アルバレス。元祖「エイリアン」の監督:リドリー・スコットのお墨付きも得ているようで、期待が高まる。
 また「キャラクター系スピンオフ」に限らなければ、「ジョン・ウィック」「バレリーナ」「スパイダーマン」「マダム・ウェブ」も公開される。どちらも原作の出来は盤石だが、果たしてスピンオフの出来はいかほどとなるだろうか?


 当然ながら、映画のキャラクターは映画の数以上に存在する。極論を言えば、「キャラクター系スピンオフ」を作ろうと思えばいくらでも作れるのだ。
 だからといって安易な粗製濫造に陥らず、原作をも上回る程のクオリティのスピンオフ作品が沢山産み出されることを、俺は願ってやまない。

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