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AX~High Jumpの読書記録~(ネタバレあり)

1週間ほど滞ってしまいましたが、High Jumpの読書記録のコーナーです!
(先週ハーフマラソンを走ったこともあり、色々満身創痍になっていました、またハーフマラソンのことも記事にしようと思います)

今回読了したのは、こちら!

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伊坂幸太郎先生の「AX」です!

「グラスホッパー」、「マリアビートル」に続く殺し屋シリーズの第3作目になります。前回も言いましたが、シリーズものと言っても主人公が違ったりと各々話が独立しているので、単体でも楽しめます。しかし、前にある2作品を読んだ方が、より楽しめるので個人的にはシリーズの最初から読むことをオススメします。「グラスホッパー」「マリアビートル」については感想を記事にもしてますので興味ある方は読んでみてください。

「カマキリ(恐妻家)の斧(アックス)を甘く見てるなよ」
「兜」は超一流の殺し屋だが、家では妻に頭が上がらない。一人息子の克巳もあきれるほどだ。兜がこの仕事を辞めたい、と考えはじめたのは、克巳が生まれた頃だった。引退に必要な金を稼ぐため、仕方なく仕事を続けていたある日、爆弾職人を軽々と始末した兜は、意外な人物から襲撃を受ける。
こんな物騒な仕事をしていることは、家族はもちろん、知らない。
(本の帯より引用)

前の2作は、主人公が複数人いる群像小説でその点がワクワクさせてくれる要素の一つであったから、今回の主人公が「兜」一人ということが分かったときに、なぜか残念だった自分がいた。
がしかし!!
そんなイメージを払拭するような内容で、とても好きな作品だった。殺し屋が一番恐れているものが妻という設定が面白いし、夜中に帰ってきてカップラーメンを食べると、ビニールを破く音や、麺をすする音で妻や子供が起きてしまうからと最終的に辿り着いた夜食が魚肉ソーセージと言うんだから笑うしかない。子供ができた頃から足を洗おうと思う気持ちの変化や、それを実現したいがために起こる兜の自分自身との葛藤や家族愛に胸が打たれる。王道の泣かせに来ている感動ものではないのだが、寺の鐘の音を近くで聞いたときに起こるゴ~ンという頭を揺らす振動のように読了後に心を揺らす1冊であった。
個人的には、「兜」が家族思いなのはもちろんのこと、妻も「兜」に当たりが強いが、ちゃんと「兜」を愛していたと分かる場面があり、そこも個人的にはグっとくる場面であった。

いつも通り印象に残った場面を一つ紹介して、締めとさせていただきます。

これは、「兜」とボルダリングジムで仲良くなった、松田さんとの会話の場面です。仲良くなるうちに、息子の克巳と松田さんの娘が同じ学校に通い、さらには同じクラスであること、それに加えて奥さんに尻に敷かれていることなど知れば知るほど、「兜」は親近感が湧いてきています。

「感情って相殺されないんですよね」
「どういう意味ですか」
「いいこともあるから、不満を帳消しにできるかと言ったら、そうではなくて。プラスマイナスでは計算できないというか」

「感情は相殺されない」確かにそうだ、いいことがあるから不満を帳消しにできるということはないといわれると、何かこのことについてマイナスイメージを持ってしまいそうだが、自分は、感情が相殺されないからこそ、逆に人は嫌なことがあっても前向きになれる力があるんじゃないかなと感じました。仮に感情が相殺できるとしたら、本当にとてつもないどん底に陥ったら多少のプラスじゃ相殺できないわけで、生きるのが嫌になってしまいそうになると思いますが、相殺できないからこそ、マイナスとは違うベクトルでプラスの感情も見つけることができて、それを頼りに前向きに生きることができる、それはある種人間に備わった特殊能力なんじゃないかなと感じました。

毎回思うけど伊坂先生は恐妻家なんですかね(笑)
でも各種作品から読み取るに、恐妻家と感じさせてるのは淸の恐妻家ではないのでやっぱり恐妻家ではないのかな、ん~分からない(笑)
伊坂作品の中でもトップクラスに好きな作品の1つになりました!
次の殺し屋シリーズも出して欲しいです。
まだ未読の方は是非!!
ではまた次回、バイバーイ

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