短歌連作「邦土外苑」
初出:『早稲田短歌』50号(早稲田短歌会, 2021)
※初出時よりタイトル含め改稿あり。
指先にて隠さるるほどの距離を飛ぶ戦闘機より音ふりつもる
青年はとんぼへ石を投げうちて 砲火はいかに海を穿たむ
温暖化指標の蝶は美しく内地の北へ拡がるらしも
建て替へのとき不発弾見つかるは水子に似たり かなしかりけり
F6F戦闘機(グラマン)の音の話をするときは戦慄として祖父若返る
風車祝ひ(かじまやーゆーえー)に来てかざぐるまをわたされたればしばし飾りつ
弔ひは死後五〇年を経て終はり墓を継ぐ子は弔ひも継ぐ
痛みより記憶が返り咲くそばをオオゴマダラはとほりすぎゆく
またバスに米軍払い下げ店の広告流れそれだけのこと
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