短歌連作「頌歌拝呈」

初出:『早稲田短歌』51号(早稲田短歌会, 2022)
※初出時より歌の削除&配置換えあり。

記念品に赤子の髪で筆を作るサービスの広告揺れてをり

感光点のみの原始の生命の 大江戸線にまなぶたを閉づ

その曲の中では三たびくりかへしジーザス・クライストはりつけられき

回想の洗面所より出で来たる男の顔は研ぎ減らぬなり

年を経るごとに次第に父親の首から上は官邸に似て

よろこびを求めらるれば電話機の電磁波ありて求めに応ず

靖国へ刀の展示みにゆけば御手洗ひのみ美しかりき

春雨に似つつくりかへし歌はるるジーザスは我らを愛したまふと

追憶よ 遊就館はたましひに擬さるるものに錆を這はしめ

手榴弾投げ合ふ夢の戦場に敵はボールを投げて遊びぬ

遠く聞く 祈りのまにま教会は大嵐来て崩れ去りにき

音楽の授業へ夢に行くときは笛を忘れつ 笛を聴くのみ

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