短歌連作「言語野」

初出:『滸』第2号(滸発行所, 2020)
※初出時より改稿あり。

掃除夫はゴンドラに乗り高層の窓をしばらく磨きてのぼる

木漏れ日は活字をよごし裏切りの銀貨巡りて墓地となるとぞ

彫刻のごとくに窓の外を見る人あり窓の外なる我を

人形を抱きてあゆむ人のゐて人形はほほゑみを絶やさず

ざはめきに交はらずをり火も声も現象なれば喪失の中

どの本も饒舌にしてあどけなし我がことのはをしばし奪ひて

蝙蝠に花粉を託す覇王樹の主従のことを一夜語りき

列島のリンガ・フランカ我が内にゐて語らしむ **を風とぞ

煙吐くはしじまの仕草ただなかに語らむとせば声帯痛む

乱れ歯の青年笑むに笑みかへし受け取らざりき神も思想も

街灯と月との蝕よ天国にあらねば門はたやすくひらく

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