アラサーの私が刀剣乱舞にハマった理由

「刀剣乱舞、きっと貴女も好きだと思う」
友人からそうお勧めされたのはいつだったか。当時はあまりゲームに興味がなかったのもあって、そのうちね。と返していたけれど、今や日課になってしまっているから、変化とは恐ろしいものである。

はいはいオタクですね、という声が聞こえるけれど、私がこのゲーム…刀剣乱舞を始めたのは、リストラにあったことがきっかけだ。

きっかけとなった解雇通知

昨年度、当時勤めていた会社をクビになった。
諸々の事情は割愛するが、一般的な中小企業で、社長が俺俺俺!タイプで辟易する部分はありつつも、直属の上司・先輩・同僚には恵まれていた。だからこそ、上司から話を切り出されたときは、本当に目が点状態。

解雇通知を受けたとき、私は上司の運転する車の助手席で、上司から渡されたスタバの抹茶クリームフラペチーノを飲んでいた。そもそもその日に限って「運転は俺がやる」やら「スタバ寄るから飲みたいものを選んで良い」とか、不自然さに気付くべきだった。(今更感)
そして人間は、想定外の事態が起きると一気に冷静になることも知った。

「私何かしましたか?」と聞いても「貴女のせいではない」「俺としては残ってほしいけれど、経営事情で…」とはっきりしない答え。ふと、なぁんだと思った。私がやってきたことはこんなもんかと冷め切った気持ちで、謝罪を繰り返す上司を見ていた。
私よりずっと年上の大人が、会社の事情と言って何度も頭を下げる、その行為の軽さときたら。本音を言うと、下げられる頭に残りのフラペチーノをかけても許されるかなと考えていた。

「大丈夫」と「ふざけんな」を繰り返す日々

自分で言うのもなんだし、独りよがりな自己肯定にしかならないが、当時はアシスタント・秘書的業務で、それなりにお仕事をしていたと思う。色々と経験できたが、経営難で入社時期・立場的に切りやすかったのが私だったのだろう。

問題は退職前の引き継ぎ業務だった。
今まで私が担当していた業務をすべて、同僚に引き継ぐ。これからだ!という案件もあったため、このタイミングで譲る悔しさは、とても言葉では言い表せない。だってそれは、私が最後まで受け持つはずの仕事だったのだ。控えめに言って、ふざけんなよと思った。
さらに、引き継ぎは…今の業務を全て失うということだ。結果から言うと、仕事を干された。辞めるなら自主的に辞めろといわんばかりの対応に、本っ当にふざけんなよと思った。

心配してくれる上司や引き継ぐ同僚には悪いが、顔を見たくなかった。上辺だけの心配なら誰にでもできる。こちらが笑顔作って「大丈夫」と言うのもアホらしい。あまりにも腹が立って、解雇通知を受けて数日後には突発旅行(欠勤)したくらいには頭と心臓がギリギリしていた。

そしてこのタイミングで、退職予定だった先輩に「絶対に自主退職するな。有休消化は絶対にやれ。勤務中はゲームでもやっとけ」と言われたのだ。

…は?ゲーム?(この人何言ってんの??)」
前置きは大分長かったが、それが刀剣乱舞である。

初期刀に選んだ"山姥切国広"という卑屈な刀

まぁ干されたと言っても、微妙~に作業はあった。しかし、勤務8時間では余裕でおつりが来る状態で、オフィス内は皆出払っている環境。仕事へのやる気を喪失していた私は、そのタイミングで昔友人からお勧めされた刀剣乱舞をダウンロード・起動したのである。
※社会人としてどうなのか、という点は最早皆無

さてどんなもんだ…何をやるんだこのゲーム。そう思いながら進めると「初期刀を選択してください」の指示文。
待て待て…そもそも初期刀って何だ????(※初心者)

「刀剣乱舞」を初めてプレイすると、最初に「加州清光」「歌仙兼定」「陸奥守吉行」「山姥切国広」「蜂須賀虎徹」の五振の刀剣男士からひとりを選択する画面になり、ここで選んだ刀剣男士が「最初に入手する刀剣男士」すなわち初期刀となる。
チュートリアルでの鍛刀や戦場で新たな刀剣男士を入手するまでパートナーとなる存在であり、仲間の数が多くなっても初期刀に思い入れを持つ審神者は多い。
また非公式ながら五振揃って「初期刀組」と称し、箱推しする審神者は相当数にのぼる。公式のトークイベントでは「はじまりの五振」と称されることも。(ニコニコ大百科より一部引用)

…多分こんな説明あったような気がする(うろ覚え)だが、とりあえず誰か選べば良いのか。初期刀組を見比べて、とある刀の説明文(多分こんな説明だった)に目を引かれた。

霊剣「山姥切」を模して造られたとされる打刀。
オリジナルでないことがコンプレックス。
綺麗と言われることが嫌いでわざとみすぼらしい恰好をしている。
実力は充分だが、色々とこじらせてしまっている。
ニコニコ大百科より一部引用)

…こじらせてるのか。卑屈なのか君は。誰だこのキャラ設定考えたの…でも、今の捻くれた状態の私には丁度良いかもしれない。勢いで選んだのが、山姥切国広という刀である。

卑屈キャラ設定に助けられたメンタル事情

プレイ当初は勝手が分からずうろたえたが、後に山姥切国広は一部界隈で"まんばちゃん"と呼ばれていることを知った。愛されてるなまんばちゃん…ファンの力は凄い。そう思っていたのだが、ゲームを進めると気になるのが、このまんばちゃんの卑屈さである。

近侍に設定すると「何を期待しているのやら」と言い、他の刀と自分を比べて「(周りは名剣・名刀)…なのに、俺は」と言い、負傷すると「血で汚れている位で丁度良い」なんて言い出すこの刀。繰り返すが誰だキャラ設定したの。

最初は「(めっちゃ卑屈だ…)」と思いながらプレイしていたが、勤務中・退職後とプレイ時間が重なると、段々気になってくる。台詞が気になりすぎて「なんっでそんなこと言うの…」「もうちょっとプラス思考にさぁ…!」「お前が!良いんだよ!!(怒)」とゲーム画面に向かって話しかけるようになった。ヤバい奴である。しかし、只でさえ自分が鬱々しているときに、相棒である初期刀が私より鬱々としているのは如何なものか。元気出せよ!誰だこの刀を選んだのは(私だ)

そんなこんな言いつつも、まんばちゃんは可愛い。今考えると大正解だった。と言うのも、人間自分よりも卑屈状態なのが身近にいると、意外に落ち着くものだ。在職中はともかく、退職後の私のメンタル事情はかなりブレブレで、ゲームをしながら突然泣き出すこともあったが、まんばちゃんがレベルアップするごとに、適度な現実逃避とメンタル修復に励めていたらしい。
自覚はなかったが、振り返ると色々ヤバかったと思う。誰だこの素晴らしい刀を選んだのは(私だ)

我が本丸のまんばちゃんは、在職中・退職後・再就職(現在)と時間を進める私と一緒に、順調にレベルをカンストし、修行帰還し、今日も変わらず近侍である。

「刀剣乱舞が好き」と言うと「オタク~」「さこは漫画・アニメ系好きだからね~」と言われることも多い。でも、昔の私がどれだけボロボロだったのか、その状態を救ってくれたのがこのゲームだということを、オタクだと言って笑った人達は知らないのだ。特に伝える必要も無いけれど、少し複雑な気持ちになる。

そんな気持ちはさておき、今日も私はまんばちゃんに会いに行く。丁度先程アップデートが終わったらしい。次のイベントは何だろうか。

最後までお読み頂きありがとうございました! 少しでも、有意義&元気になる記事でしたら幸いです。