num_ami_dabutz

南無さんは死なんよ、何度でも蘇るさ。

連続ブログ小説「南無さん」第十話

陰毛散らしと残尿さらいが犬猿の仲であるのは、この界隈ではもはや語るに及ばざる事実である。とはいえ、いざ目の前で争われると、かくも厄介なものかと南無さんは嘆息した。

 紫陽花がぽんぽんと花開き、南無さん宅の庭を赤紫に彩るころ(南無さんの尿酸をたっぷり吸った土壌で育ったのだ、無理もない)、雨上がりに陰毛散らしが例の回収にやってきた。ごめんください、回収です、と敷居をまたいだときから、南無さんはすでに

もっとみる

連続ブログ小説「南無さん」第九話

師走、雪。静まり返った山中の境内に、ただひとつ響く音がある。

 パアン、パアン、と数秒ごと、空を割るがごとき破裂音。草木を震わせ禽獣を目覚ますその音は日の出とともに始まり、鳴り続くことすでに一刻あまりが経とうとしていた。

 先頃、麓の本寺での行を終えた僧が、末寺であるところの山中へ務めに参り上がろうとしたところ、やはりこの音に気がついた。

 はて、一度は杣人の何ぞ生業と思ったけれども、木こり

もっとみる

連続ブログ小説「南無さん」第八話

平生から長らく近所の公園で用を足していた南無さんが、官憲の手によってそのところを追放されて久しい。

 いかに用を足し習わしたかわやが無くなったとはいえ、往来で放尿することの不届きさを奇跡的に解していた南無さんは、そのころから致し方なく自邸の垣根へ用を足し続けていた。

 黄金色の打ち水は今日も垣根のシキミを濡らし、葉は水を弾いて玉の輝きを放っていた。ようようと登り始めた朝日に、飛沫がキラキラとま

もっとみる

連続ブログ小説「南無さん」第七話

時は平成、世は太平。

アスファルトは熱射を照り返し、南国もかくやとばかりに往来人の肌を焼く。

さながら地獄の様相で沸き立つ陽炎の奥、ビルの影から一糸とまとわぬその身をゆらりぬるりと現したるは、南無さんである。夏なので時流に合わせ、クールビズだ。

さて、かような日照りに半袖を選ぶ人間が多い中、なんの故にか暑苦しく胸元を締め、そのうえ上着まで羽織った黒装束の若者の姿を、さきほどから南無さんは目に

もっとみる

連続ブログ小説「南無さん」第六話

ついに渾身の我を世に晒す時がやってきたようだ。南無さんは回覧板の文字を見てそう解釈した。

そこに書かれていたのは英語らしかったが、なにぶん南無さんは義務教育を放逐された身である。横文字が読めなくて当然だ。南無さんの識字はサンスクリットで止まっていた。

どうにかヘボン式で読むことはできたが、南無さんにはどうにも聞いたことのない言葉だったので、より近い自らの理解が及ぶ言葉に変換することにした。

もっとみる

連続ブログ小説「南無さん」第五話

秋は夕暮れ。弓なりになって雄叫びを上げた南無さんは、フッと糸が切れたように後ろへ倒れこむと、やがて静かに射精した。

寝転がっていると、公園の芝生が背中をちくちくとくすぐるようで、それが気持ちよくて、南無さんは二度目には勃起もせずにサラリと流し出した。さながら乳白色の泉が湧いて出たようである。

山に帰るカラスの一羽が、通りざまに糞を落としていった。南無さんの少し手前より投下されたそれは、慣性にし

もっとみる