へる

夫の料理失敗ノートが、かわいい。

妊娠中から食生活の変化があったと書いたが、それは私だけの話ではない。一緒に生活を共にする夫も、もちろん影響を受けた。

つわり期は私が料理できないことも多く、そんな時はなるべく早く帰ってきてもらい夫が料理をするようになった。お惣菜を毎回買うわけにはいかないし、コンビニやファストフードは私が断固拒否していたから。しかし弊夫、一人暮らし時代の冷蔵庫にはビールと味噌(一回だけ作った味噌汁の名残)しか入っていないというごりごりの料理不精。「これ作って」とレシピを渡してもそもそもの食材の捌き方というか、日常的に料理を作る人が無意識でやっている「これはこのくらい焼けばいいだろう、塩少々はこれくらいだろう」という作業が全くできない。ほうれん草を茹でるのもおっかなびっくり。なので当然失敗をしてしまうのだが、そこで一つ私が感心したことがある。それは毎回の失敗を忘れないようにと「料理失敗ノート」を作ったことである。台所の片隅にペンと共に置いてあり、何か失敗してしまった時すぐに書けるようにしてある。

その一部をこっそり掲載。これを見ると自分自身も料理をはじめた頃を思い出されて、台所でクスッとしてしまう。

本当に、本当に初歩的なことなのだけど、これが分かっていないとどうにも先に進めなかったり、食材をイマイチにしてしまいがちなことが書いてあり身が引き締まる。これ、一人暮らしをはじめた人向けに見せたら意外と役立つのでは?レシピ本に書いてあることはこの「初歩中の初歩」を前提として進んでいることが多い。私も大学生になり一人料理を始めた時、味付けよりも食材の下処理の仕方とか、焼く、茹でる、蒸す、の基本を知りたかった(そのせいで食材を生焼けにしてしまったりもしたから)。こういう生活密着型失敗本、すごくいい。他にもただつらつらと書いてある掃除失敗談とか、買い物失敗談とかとかあればいいのに。

と、こんな夫の失敗ノート、感心と同時に愛おしさも湧いてくる。つわりで私がベットでうずくまって闘っていた時、夫もまた台所で一人格闘していたことが伝わってくるからである。スマホを見ながらああでもないこうでもないと包丁を握り鍋に湯を沸かし、出来上がりに落胆する。でもやめることはできない。料理をやめたら食べることはできなくなってしまうから。生きていけなくなってしまうから。

つわりの時はそれどころではなかったけれど、今このノートを見返してみると、一緒に闘っていた夫に「ありがとう、よく頑張ったねぇ」と心からの言葉が出る。心がぎゅっとなって、この人と一緒に暮らすことを選んでよかったなあと思う。選んだ私も偉いぞ、と自画自賛すらしてしまう。どこかで夫婦とは一緒に出るかも分からない水を求めて井戸掘りをすることだ、みたいなことが書いてあったけど、この時は二人で一生懸命井戸掘ってたね。

そして現在。夫は料理がそれほど嫌いではなくなり、休みの日は台所に立つようになってくれた。失敗ノートは前よりも開く頻度はなくなったみたいだけれど、今でも継続されている。夫の料理失敗ノートは、今日もかわいい。


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