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読書感想文【屍人荘の殺人】

おもえば今までミステリー小説を読んだことがない気がする。
はるか昔、中学校の図書館でアガサ・クリスティかコナン・ドイルを読んだことがあるような気がしなくもない…??のか…??というレベル。
まったくもって記憶があやふやだ。
つまり、私にとって本書は事実上はじめてのミステリー小説になる。


物語はミステリー好きの主人公葉村譲とその先輩明智恭介、そして同じ大学の謎の探偵少女剣崎比留子が、映研による夏合宿ーという名の合コンパーティーになかば強引に参加、そこで「想像だにしなかった事態」に遭遇。主人公たちのいるペンションは、はからずも「陸の孤島」となってしまう。
「想像だにしなかった事態」によって起こされた絶体絶命の状況で、またしても思わぬ事態ー殺人事件が起こる。
クローズド・サークルという極限状態のなか、主人公とヒロインは事件解決と「陸の孤島」からの脱出を目指すーというもの。


率直な感想。
ミステリーを知らないにしても「その発想はなかった」と思う状況設定。
中には実際の事件をモデルにしたもの、実在する人物や作品名が多数出ており、それぞれの「ピース」を寄せ集めて融合、ミステリーとしてオリジナルの作品を作りました、といった印象を受けた。
文章はいい意味で堅苦しくなく、たいへん読みやすいのでスラスラと一気読みしてしまった。
トリックだったり、なぜ犯人がわざわざ手間暇かけて「そうした」理由もわかりやすい。

総じて、非常に面白く楽しめて、「違うジャンルの本を読んでみてよかったー!」と思える作品でした。

なお、私が「お、この人なんか良さげで好み」と思った人は序盤で早々に退場。
以後「再登場」することもなく終了した。
「なんでや!!俺の推しが!!」となったのはいうまでもない。


さてこの作品についてもう一つ。
読書感想文を書くにあたってさまざまなサイトのレビューを覗いたが、なんとも賛否両論が激しい。
特に「否」側は「つまらない」「時間の無駄」「金返せ」「文章が下手」「ラノベ以下」「これで本格ミステリーを名乗るな」「出版社は恥ずかしくないのか」などなど罵詈雑言の嵐である。

レビュアーの言い分もわからないこともない。

ヒロインの設定がチグハグで不安定。
他の登場人物も、良くも悪くもキャラがあまり立ってない。
クローズド・サークルの原因となった事件もフワッ…としたままフェードアウト。
こんな状況で普通こうするか??と突っ込んだり、見取り図もたいして役に立たない。
著者は冒頭で「本格ミステリーに傾倒していたわけではない」と述べているが、主人公やその先輩がミステリー研究会に入らなかった理由がまんま著者に当てはまると思えば、なかなか皮肉が効いてる。

と、なれば思いつくのはただ一つ。

「他の人のいう『面白いミステリー小説』とは、一体どんな本なのか」

調べてみると、なるほど全く読んだことない私でも聞いたことのある名前ばかり。
ここいらを読んでみて、もっと視野を広げてみようと思う。
そういう意味でも、本書は私の読書人生に新たなキッカケをつくってくれた、非常に意義のある作品でした。

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