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〜覚醒遺伝子〜 時かける翼

イラスト/refeia様(株式会社KADOKAWA 刊)
https://www.kadokawa.co.jp/product/201009000457/

2011年01月刊。覚醒遺伝子シリーズの3作目にして完結編。

デビュー前の準備もあり、『空を継ぐもの』からわずか2ヶ月後に『めぐりあう鼓動』は刊行された。

しかし本作の発売は、そこから半年後。
おおまかな構想といくつかのエッセンスは存在していたものの、プロット、初稿の段階から苦労の連続で、時間だけが飛ぶように過ぎていった。

加えて本作でシリーズ完結ということもあり、クライマックスの構成に心血を注いだのを覚えている。改稿の勘所もまだ掴み切れておらず、修正回数ばかりを積み上げた。

今フォルダを見てみたら、14版まで残っていた。実際はもっと書き直したはずだ。今ほどの経験も自信もなく、よく乗り切れたものだと思う。

この頃は自分のアウトプットに対する執着が強く、編集氏の指摘を受けて書き直すことに「身を切るような」痛みを感じていた。それが作品をより良くするために必要不可欠なプロセスだということを、このときの自分はまだ正しく理解していなかった。

本作の主人公、そしてヒロインの代替なる天使ナナは、感覚的には子どものようで「かわいいやつら」といった愛情を感じさせる存在。たぶん私の軸が、月雄やツェツェの近くにあるからだろう、と自分では思っている。

前作までに登場したキャラたちも、それぞれ成長した姿で登場する。
乃絵瑠のシーンは当時の編集長にすごく気に入ってもらえて、嬉しかった。

個人的に思い入れがあるのは、君華とツェツェのふたりが夢のなかで向き合うシーン。ここでもrefeia様が、思い描いた以上の美しさで文中イラスト化してくださった。もはや神である。

執筆中、自分の頭にあったナナのイメージは、かなり冷徹な雰囲気だった。頂いたキャラデザを見て驚いた。文章から想起される冷たさを残しつつ、あどけなさや儚さといった要素が絶妙なバランスで伝わってくる。惚れ惚れとして、思わず感嘆のため息をついたことを覚えている。

覚醒遺伝子シリーズがここまで自分にとって思い入れのある作品となり、「本当に好き」と言ってくださる読者様が多いのは、refeia様がイラストを手掛けてくださったおかげだと思っている。

「ぺーぺーの新人なのに、こんないいイラストレーターさんに描いてもらって、ほんとに良かったねぇ」と、ツマにもよく言われた。

目次の章タイトルを見返してみた。

好きなものは、
第一章、「落ちてくる螺旋」。
第五章、「この声が聞こえたら」。

本作で初めて、「物語を閉じる」という経験をした。
クライマックスのあたりを書いているとき、寂しくて仕方がなかった。もっともっと、彼らの世界を描きたかった。自分の力不足が不甲斐なくて、泣きそうになりながら著者校正をしていた。

けれども10年近く経った今なら、あれで良かったと思える。当時の精一杯、必死で向き合って、全力でもって幕を降ろした。寂しかったのは事実だが、そこに後悔はない。

個人的な略称は『ときつば』。(断じて『ときかけ』ではない)

#小説 #本 #創作 #ライトノベル #電撃文庫 #覚醒遺伝子

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