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ちびとも2

イラスト/color様(株式会社KADOKAWA 刊)
https://www.kadokawa.co.jp/product/311760600000/

2012年11月刊。
1巻発売から7ヶ月で刊行にこぎ着けた本作では、ラブコメの定石というかなんというか、新キャラが登場する。

5歳児柚葉のライバル的存在であり、同じくちびともに通う”黒い園児”みゆちゃん。彼女は書いていて、楽しかった。
当時、プライベートでも毎日保育園に我が子を送迎していたので、いろいろな年齢月齢の子どもたちと仲良くなった。
柚葉や璃空、みゆちゃんに直接的なモデルがいるわけではないが、現実の子どもとの交流で得た様々なエッセンスは、確実に園児キャラたちの血肉になっているはずだ。

本作のストーリー展開として、主人公とWヒロインとの距離はどうなる!? という点だけでなく、夏南とさよりの関係性にもフォーカスした。彼女たちの間に立つ主人公がどう動くか、といった部分について、バランス感を繰り返し慎重に模索した。

クライマックスの解決編で柚葉が置いてけぼりにならないように、彼女をどうやって活躍させようか、編集氏とふたりであれこれ悩んだ記憶がある。
結果的に前振りも上手く活用して、いい感じにまとめられたと思う。

夏南パートにおける璃空の発熱事件は、我が子の突発〜救急車体験が元になっている。初稿で、そのときの焦りや恐怖をそのまま克明に表現したら「ちょっとリアル過ぎて怖いです」という指摘が入り、多少マイルドに書き直したりもした。

そういえば、ヒロインのひとりである夏南にはモデルがいる。当時、我が子が通っていた保育園に、ある小さな赤ちゃんが在園していた。その子のママがとても若く、高校生だったのだ。じきに転園してしまったので、残念ながら私は直接そのママとお会いできなかったのだが、”朝、制服姿で園に赤ちゃんを預けにくる女の子”という話を聞いて、その光景を想像したのが始まりである。

夏南のモデルというか、『ちびとも!』という作品が生まれる最初のきっかけ、インスピレーションを与えてくれたと言っても過言ではない。その若いママも、赤ちゃんも、名前すら知らないままだが、一方的に感謝している。元気にしているだろうか。

先生陣では、サキ先生とエージ先生にも一応モデルというか、イメージを与えてくれた存在はいる。・・・みんな、元気かな。(遠い目)
ちなみに作者的に、一番気になるのはもちろん(?)リサ先生。一緒にお酒飲んでみたい。まぁ、コミュニケーションが成立する気がしないけれど。

巻末の連絡帳は1巻よりもパワーアップしている。柚葉が描いたうさぎの絵だが、実は我が子が描いた絵を取り込んで少し修正したものだ。
主人公作のプリモアのカットは、color様に描いて頂いた。こんなこと頼むのは失礼かな、とヒヤヒヤしていたが、なんと快諾してくださった。本当に、感謝しかない。

残念ながら本シリーズはあまり売り上げを伸ばすことができなかった。全ては私自身の力不足が原因だ。
3巻を出すことは叶わず、初めての「打ち切り」経験となった。

ちなみに、もしも続編の執筆が現実になったとしたら・・・、いつでも書き始められる自信がある。彼らの物語は、私のなかではまだきちんと閉じられていないからだ。

「覚醒遺伝子」シリーズとはまた違った形の愛情を込めて向き合った作品だけに、ショックは非常に大きかった。地面に倒れ伏して動けず、無力感に苛まれるような感覚だった。再び起き上がって歩き始めるのに、少しばかりの時間が必要だった。

#小説 #本 #創作 #ライトノベル #電撃文庫 #ちびとも #ラブコメ

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