見出し画像

「ナイルパーチの女子会」~適応しようとすればするほどから回る〜他人を知って自分を知る恐怖

こんにちは、こんばんは、スターです。

スキやフォローにいつも感謝しております。
自信のないまま投稿を続けていけるのも、読んでくださる方の影を感じられることが一番大きいです。励みになっております、ありがとうございます⋆


今回はドラマの感想です⋆

⋆⋆⋆

「ナイルパーチの女子会」
テレビ東京 2021 全八話
出演 水川あさみ 山田真歩
2021年民間放送連盟賞〈テレビドラマ番組〉優秀賞受賞

同名小説が原作で、作者は柚木麻子さん。
第28回山本周五郎賞受賞作品。

ドラマを一気見したんですが、やっぱり私はテレ東ドラマが好きだな~、と、改めて実感できた作品でした。

第一話の最後に流れた主題歌、ロザリーナ「涙の銀河」

ドラマの世界観に入り切っていた、頭の中にこの曲が流れてきた瞬間、
曖昧だった登場人物の気持ちやストーリーの趣旨が、川の流れのよう流れてきました。

とても新鮮で心地のいい空気に包まれて、思わずポーっとしてしまいました。

そして、よく聴いてみると、禁断の恋の歌でした⋆

このストーリーは、一言で言うと、

「本来は蝶のように舞いながら生きていた女子たちが、
社会に適応しようとすればするほどに、獰猛になっていき、
ラストで、本来の自分と向き合い進もうとしていく物語です。」

なので、恋愛ドラマではありません。

女同士で競わされ敵対関係の構図を作らされてきた歴史がある。

というテーマにも似た作品のメタファーを、主人公のセリフから聞いた時、

「あの子は貴族」2021
出演 門脇麦 水原希子
原作 山内マリコ

を、思い出しました。

この映画の中でもそのようなことが言われていました。

独身時代、私も派遣社員の一人暮らし(ローンあり)の、ワーキングプアだったので、

女子がこの社会で生きていく大変さを痛いほど理解できます。

ママになってからも、ママ同士のコミュニケーションの取り方の距離感が全くつかめずもがきまくっていたので、

女が群れた時に発する匂いや見えないルールの中で生きていく大変さも、痛々しいほど理解できます。

(たぶん作品のそれとはズレてる💧)

⋆⋆⋆

作品の中で、獰猛というか、本来の自分の気持ちを見失ったような行動を相手にしてしまう主人公。

本当は仲良くなりたいだけなのに、から回って傷つけ合ってしまう。

でもそれは、きっと誰の何のせいでもなくて。

他人に合わせて、自分を見失ってしまっているから。

そこで出てくる、「本当の自分」

そんなものは鼻から理解していないし、見たこともない、そんな現代人は多いんじゃないかとも思う。

「本当の自分」の姿なんてわからないし、本当の気持ちなんて知らない。

そんな女子たちが、理解したいでも理解したくない、そんな気持ちの挟間でもがきながら、社会というう水槽の中を泳ぎ続けるしかできない。

⋆⋆⋆

ナイルパーチ……スズキ目アカメ科アカメ属の肉食魚。一つの生態系を壊してしまうほどの凶暴性を持つ、日本でも要注意外来生物としてリストアップされている。アフリカの川に生息する。

映画のタイトルにも入っている「ナイルパーチ」。

主人公はこの魚の境遇と自分自身を重ね合わせます。

ナイルパーチは日本に輸入され、名もない「白身魚」として市場に出回っているという。

美味しい白身魚を養殖しようと、湖に放流したところ、湖の在来種を全て食い尽くしてしまったという逸話があるらしい。

主人公は言う。

「ナイルパーチは、アフリカの川で暮らしていた時は、自分が他の種族を食い荒らすような獰猛な生物だなんて、知らずに生きていたのに。

人間の私利私欲のために知らない湖に放流されたせいで、自分の未知の獰猛さを目の当たりにしてしまったのではないか」

ナイルパーチという魚の哀しみについて語っている時の、彼女が、
「素」の彼女だったような気がします。

⋆⋆⋆

他人を知って自分を知る。

湖、水槽、学校、社会。

そんな箱の中に入れられて初めて、潜在的な本来の自分自身について知ることが出来るのかもしれない。

でも、

それは、とても苦しくて哀しい顔を持つ反面、

自分というステージが上がるチャンスだったりもすするのかもしれません。

痛々しいですが、傷ついてもがいて失ってでしか、成長することしかできないのが、人間という種族なのかもしれません。

⋆⋆⋆

ラストで彼女たちが行きつく、本来の自分へと静かに戻ろうとそれぞれ動き出します。

全話を見て、

タイトルの「女子会」という言葉に込められた、

「女子会」というライトな意味合いの裏にある揶揄表現が分かった時、

静かな恐怖が胸の中に広がると思います。

主人公が正社員として勤める商社の派遣社員の高杉まお。
彼女の生い立ちに思いを馳せた時、
貧困・格差・あざとさの裏にある確固としてある暴力的な部分。

その理由を考えたときに浮かんでくるのも、社会の中での弱弱しい場所にしか立てないように仕向けられた、女性の姿が見えてきました。


最後に、主題歌の印象的な歌詞を綴っておきます。

もし生まれ変われたら
愛し方を教えて
こんなに傷つけ合わなくて済むように
気づいたときはもう遅すぎたんだ
羽は偽物だった


ありがとうございました。
合掌。
@スター@

この記事が参加している募集

テレビドラマ感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?