書くこと
夕方になって、やっと晴れた。
昔から、散歩が好きだった。あてもなく、ただ歩くために歩いてきた。
川沿いを散歩した。どこに住んでいた頃も、川沿いが散歩コースだった。
11月だけど、雨上がりの水辺には、小虫がたくさん飛んでいた。
ウィンドブレーカーが濡れてしまいそうなくらい空気は湿って、地表に冷たく沈んでいた。
耳が冷えて、痛んだ。
高架の電車の影が、ビルの窓を走っていった。
私が見た風景、私の感触。
自分の感触を、言葉に置き換えるのは難しい。
でも、試みたくなる。
試みは、大抵の場合、違和感に終わったり、言葉の力に自分の感覚が囚われていくことで変質してしまう。
でも、やっぱり試みたくなる。
世界を理解したい。自分の立っている場所を知りたい。
感じるだけでは不十分で、言葉にすることも難しい。
言葉だけではない、誰かの表現を頼りに、知ることができたような気がすることもあるけれど。
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