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『古今和歌集』でAIアート㉖〜典侍藤原因香朝臣/近院右大臣(源能有)

(贈歌)たのめこし 言の葉今は 返してむ わが身古るれば おきどころなし
(答歌)今はとて 返す言の葉 拾ひおきて おのがものから 形見とやみむ

(贈歌訳※)あなたが私に約束してきた言葉を、今はもうお返ししましょう。私は過去の人になってしまったので、身の置き所もなければ、あなたの手紙を置いておく意味もありません。

(答歌訳※)「今となっては、もうお別れ」と返された手紙を、落ち葉を拾うように、一枚一枚拾い集めましょう。私が書いたものではありますが、せめてこれだけでもあなたの形見と思って。

(※引用:『100分de名著 古今和歌集』 渡部泰明著 NHK出版)

今週も、この2首をモチーフにした和歌絵です。

先週は、答歌を送った男性(源能有)の気持ちを想像しながら絵を描いてみたのですが、

今週は、答歌を受け取った女性(藤原因香)の気持ちを想像しながら描いた絵です。

テキストによれば、彼女は現代で言うところの「バリキャリ」に当たる方で、多くのタスクを抱えながら日々奮闘していたんだろうなと思われます。

そんな中で巡り合った近院右大臣たる源能有は、時の文徳天皇のご子息ですから、家柄は言うまでもなく、歌人としての教養も高いとなれば、彼女にとっては尊敬できる恋人だったんだろうと想像できます。

現代でいえば、「地位も高くて仕事もできて、音楽や文学や芸術にも秀でた超ハイスペックな彼氏」ですよ、能有さん。ならば藤原因香さんにとっては、どんなことでも相談できて、頼りになるパートナーだったのでしょう。

ここで、平安の世では起きそうもないことですが、今風に彼らの間柄をアレンジしてみます。

これだけのスペックを持った彼にならば、彼女は仕事のことも相談しそうですよね?なんなら、自分の案件を手伝ってもらったり、もっと言えば恋人であると同時にビジネスパートナーとして、一緒に事業なんかやったりしていても不思議はないのではないかと。

ただ、お互いに相手にとっての「一人多役」って疲れるんでしょうね。だからお互いを想う気持ちに嘘はないんだけれど、だんだんと疎遠になってしまい、残念ながらお別れを迎えてしまったという、なんとも物悲しいお話になってしまったと。

ただテキストによれば、冒頭の「贈歌」を送った藤原因香さんの真意は「二人の関係を、そろそろきちんと清算しましょう」という割り切ったもので、それを受け取った源能有さんも「(因香さんの)潔さにたじろぎつつも」答歌を返したとあるので、答歌を受け取った頃の因歌さんの気持ちはとっくに整理がついていたはずです。

だから、彼と過ごしたお部屋にも彼の面影など残さずに、キレイに整理したはずだった、、、のですが、彼女がいつものように朝まで仕事をして、ふと気がついたら左前に後ろを向いたディスプレイがポツリと置かれています。

多分これは、仕事のパートナーでもあった彼が使っていたものです。だからディスプレイの画面は向こうを向いています。その隣、つまり自分の目の前には彼が座っていたわけで、今彼女自身が浴びている朝日は、一緒に仕事をしていた頃には彼が遮ってくれていたものかもしれません。

それを全身で浴びてみて初めて、彼の存在が完全に消えていないことと、その大きさを再認識したという、そんな瞬間を切り取った一枚だと解釈したのですがいかがでしょうか?

とはいえ彼女は、「フッ」と一息自嘲気味に笑うだけで、スッキリと眠りにつくんだろうなと思います。

さすがはバリキャリ。清々しくてカッコいいですね。

以下、今日の和歌絵のレシピです。

整理整頓された部屋、一人暮らしにしては広く感じる、女性の後ろ姿、朝日が彼女を前から明るく照らす、彼女は長い髪を強く結ぼうとしている、彼女が使うテーブルの上でPCの画面が強く光っている、その向こう側には空いた椅子

A tidy room, spacious for a single person. A woman's back view. The morning sun shines brightly on her from the front. She is trying to tie her long hair tightly. The PC screen is shining brightly on the table she uses. On the other side of it is an empty chair.

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