4世代続く築160年以上の古民家に増築された家。
約50年以上前に増築されたお家のリノベーションを行います。その隣には160年以上続く古民家が繋がっています。
少し前までは(2000年代初頭あたり)ここら辺の年代は単純に「古くてダサい」そんなイメージがあったかと思います。
母屋の160年の古民家は欅の太くて立派な柱がはしっていて、いわゆる、アンティークやヴィンテージの領域になって、2000年代に入った時にはすでにその貴重性は評価されていました。
最近はネオクラシックやネクストビンテージと言った感覚で色々な物が評価されつつありますが、住宅でもこの1970-1980年代の佇まいはもう少し評価されつつあるのではと感じています。
こう言った案件のよくあるリノベーションは、土台と使える柱を残しスケルトンの状態にしてフルリノベをするのが、特に大手のリフォーム会社の提案だと思います。その場合費用も新築を建てるのと同じぐらいになりますが、新築と同じぐらいの快適さや機能、特に断熱性などが売りです。
最近は地元の小さな施工会社もそう言ったスケルトンリノベーションの提案が多く、出来るだけ今ある状態を生かすと言ったリノベーションはあまりないのが現状です。
話はそれますが、リフォームとリノベーションの違いは簡単に言うと、前者の場合は老朽化などの理由から住まいの部分および表面的な箇所を回復・修復することで、後者の場合は住まい手の生活に合わせて既存の物件の空間を再設計し新しい価値を生み出すことを言います。大手のリフォーム会社は、おそらくリフォームの方が一般的に浸透している言葉なのでこう言った境目があまり無く、リフォームと言う一つの言葉で統一しているのかと思います。私自身もこれは単に言葉の定義なだけで、結局は何が施主さんに取って一番良いのかが重要だと考えています。
今回のリノベーションは勿論予算的なこともあるのですが、施主さんの思い出深いこの家の内装を出来るだけ残し、いずれよりアンティークとなって行くであろうこの年代の良さを残すのが1番の目的となります。
先にも書いたように、この案件は繋がっている160年の母屋と比べると使われている木材などはそこまで貴重なものではないのですが、実際柱を見てみると材料はヒノキで節一つない立派なものでしたし、建具や照明器具なども今作るとなるとかなり高額なもので、若干流行遅れなデザインに見えるのですが、いずれネクストビンテージになるであろう風格がありました。
そして今回はその素質を生かす様に部分的に使えるものは残し、断熱もしっかり施せる様にデザイン設計をしました。ただフルスケルトンからのリノベーションとは違い、床や壁は残しつつ施工するので、よくある大手リフォーム会社の謳い文句の、高気密・高断熱施工とは違うものとなります。
高気密・高断熱施工は夏は涼しく冬は暖かくてとても快適なのですが、個人的にはあの空気がこもる息苦しい感覚はどうしても好きになれません。古民家などは風通しがとてもよく(当然冬はとても寒いですが…) 過ごしてみると、自然の空気の流れはこれほど気持ちの良いものなのかと実感します。
当然気密性が高くなると湿気がこもりやすく家も傷みやすいのですが、最近の家は「24時間(機械)換気」をやっているものもあると聞きますが、それにはまた設備コストと運営コストが掛かり、まるで店舗に住んでいる様な感覚になってきてしまいます。
今回の案件は年代からして高気密・高断熱には程遠い施工がされておりましたが、その代わり一切湿気がなくシロアリの問題もなく、柱もしっかりとても丈夫で耐震性も優れている優良物件でした。施主さん曰く、当時の大工さんにお任せで料金は高かったとの事でしたが、その大工さんの仕事に対する心意気が感じられます。
少しブログが長くなってしまったので、今日はここら辺まで。
次回は施工前のトイレ周りやリビングなどの内装の写真を載せていこうと思います。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?