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つよくやさしかった           さっちゃんが遺していってくれたもの 

さっちゃんが亡くなった
2年間、癌と闘いぬいて

さっちゃんと知り合ったのは
小学校の『オヤジ・オカンの会」だった
子どもたちとドッジボールして、花火して、
水鉄砲して、泳いで、キャンプファイヤーして、
走って、遠足行って、笑って、カレーライス食べて
打ち上げでベロベロになって

さっちゃんは、登校班の当番でも
いつも笑顔で、子どもたち一人一人の名前を呼んで
「いってらっしゃい!」「かわいい服、よう似合ってるでぇ!」と
声をかけてくれていた
子どもにも声をかけることが出来ないワタシには
一生不可能な役を軽やかにこなす美人ママだった

すんごい高齢出産で、ずば抜けて年寄りのワタシ、
病的(ほんとは病的ではなく病気?やけど)に人見知りなワタシにも
するりと話しかけてくれ、輪の中に引き入れてくれる優しいママだった

仕事で忙しいのにPTA役員もさらりと引き受け
仕事の出来る人らしい、清々しい仕切りも見せてくれた

子どもたちのスポーツ応援では、まぁまぁなオラオラ声を
張り上げて、誰よりも鼓舞していた
ダメなことをしたガキンチョ(お子さま)には
ガツンと注意するフェアな逞しさも見せてくれた

引くぐらい夫婦仲がよくて、嫉妬するくらいの仲良し家族
おいしいものが大好きで、食べ歩いたおいしいもの、
愛する息子たちの成長を、夫婦でそれぞれSNSにあげていた

そんなさっちゃんが2年前に癌になった
SNSでの様子がおかしかったから、体調悪いのか?と思い
恐る恐る聞いてみたら「癌やねん、でも大丈夫!」と言った

いやいや、大丈夫ちゃうやん
そこは、よよよ…とか大袈裟に泣きくずれてみたりするとこやん

でも、最近は薬もよくなってるし、ワタシの両親も
従姉妹も友達も抗がん剤が効いて誰も死んでないし
一回ハゲちゃうかもやけど、大丈夫やわ、きっと
ワタシは、そう思った
多分みんな、そう思ってた

実際、さっちゃんは一度は元気になって、
「体力づくりやねん!」と息子たちとウォーキングしたり
おいしいもん食べたり、お菓子つくったり、
仕事にも戻ってたし、みんな、安心してた
ワタシは、また、ごはん行こうなぁ~って、手を振った

結局、弱虫で人でなしのワタシは
いつも通り、さっちゃんに対してまで、
若くして亡くなる人に対してまで、
また、ごはん行こうなぁ~って、
ホンマいつも通り、適当で、ええ加減なオバハンのままやった

7つも8つも年下の人に、世話になって、仲間に入れてもらって、
親切にいろんなこと教えてもらったのに
最期近くには、様子が気になって、どうしているのか心配で
メッセージを書いては消し、消しては書き、
でも結局は送信できなかった

そうやってぐずぐずしているあいだに
さっちゃんの訃報が届いた


間違った大人の間違った行いが続き『オヤジ・オカンの会』は
ほぼ壊滅状態だったし、さっちゃんの息子たちは
中学生と高校生になっていた

けれど、お通夜もお葬式もさっちゃんが活躍していた頃の
小学校の先生方や仲間たち、さっちゃんにお世話になった
子どもたちなどが、たくさん集まっていた

ワタシの娘のサリーは、さっちゃんにありがとうの手紙を
書いて持参して、涙を必死で堪えたけれど、かなわなかった
息子のサンは高校の学ラン姿で、離れた場所に座り肩を震わせていた
あちこちから、大人に混じり子どもたちの泣きじゃくりが聞こえた

言わば、ただのご近所さんやのに
みんなが泣いていた
一番身近なご近所さんで、一番さっちゃんに可愛がってもらった、
サリーの同級生でもあるノノちゃんは
茫然自失で立ち尽くしていた
他の同級生マコちゃんとニッちゃんは大泣きしていた

「よその子が、こんなに泣くんや」
ワタシは、さっちゃんスゲーな、と思った
わが子の前で2回しか涙を見せたことのないワタシだけど
さすがに今回ばかりは泣いた

お通夜と葬儀の数日後、小学校で運動会があった
何年かぶりの全学年での運動会
さっちゃんが居た頃に比べると、プログラムも活気も
びっくりするくらいショボい運動会
お揃いのシャツを着た『オヤジ・オカン』の姿もない

でも、ノノちゃん、マコちゃん、ニッちゃん、
サリーたち4人の気合だけは、凄まじいものがあった
ノノちゃんからは常軌を逸したような闘魂が、溢れ出ていた
騎馬戦でのそれは、殺気に近いのではとビビッてしまったくらい

ワタシが不覚にも「暗いし見えへんわい」と侮り、
涙してしまった炎柱の纏っていた炎を、ノノちゃんは背負っていた
小さな身体で相手から帽子を奪い取り、白い帽子を投げ捨てる姿は
まさに炎柱だった

ニッちゃんも凄まじい勢いで、男の子たちから赤い帽子を
奪っては投げ捨て、一番たくさんの赤帽を投げ捨てた
ドローで迎えた最後の一騎打ちでは、相手は無敗の男性大将の騎馬が
出て来たけれど、ニッちゃんとサリーは
「わたしらが行く!」と立ち上がった

ニッちゃんは騎馬の上で腕を振り回し、
相手の大将をのけぞらせた
騎馬のサリーの体当たりと頭突き返しで
相手の騎馬をぶっ壊して、ニッちゃんとサリーは勝った
練習では、いつも負け続けていたのにな
よくがんばった

運動会のあと、更衣室で4人の女の子は泣いた。
「くそっ!徒競走、2位やった、さっちゃんに怒られるわ」
「私も、2位やった、さっちゃんに1位を見てもらいたかった」
「騎馬戦、負けたーーー!くそっ!!!、さっちゃんに絶対勝つって言ったのに」
「みんながんばったし、怒られへんと思うんやけど……」
「勝たないとあかんねん!意味ないねん!!」

あきらめへんで、がんばったんやったら、
さっちゃんが怒るわけないやろーが。
よーがんばった!って笑ってるにきまってるわい。
絶対泣かないノノちゃんが、みんなと泣いてるの見て
さっちゃん、ホッとしてくれてるわ。

なぁ、さっちゃん!
ただのご近所さんの子どもたちがな、
「さっちゃんみたいに、いつも笑顔で、強くて優しい人になる!」
(「出来たらさっちゃんみたいに美人に…」)って言ってるわ
ただのご近所さんやで?
ほんま、すごくない??

「わたし、女の子産めなかったし、サリーのこと
 ほんま、かわいいねん!」って言って膝に乗せて
頭をいっぱいなでてくれて、ありがとう。
サリーの手を引いて遠足を歩き切ってくれて、ありがとう。
ママ友のほとんどいないワタシの子どもたちに、いつも
声をかけてくれて、ありがとう。

ワタシ以外にも、たくさんのママさんが感謝してると思う。
ワタシはこんなんやから、サリーに教えてやれないこと、
さっちゃんが、いっぱい教えてくれました。
この小さな町(ほんまは村)には、さちよチルドレンが何人も居てます。

さっちゃんがかわいがってくれた娘たち
さっちゃんみたいに、なんの悔いもないと言い切れる、
天職や最愛の人や友に出逢って、生き切ってほしいと思う。
これからも応援してやってな。


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