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「バトル・ロワイアル」高見広春

こんな噂を聞いた。
火垂るの墓が放送禁止になっている、というものだ。
子供が死ぬ、あまりにも悲しい話だし、戦争で死ぬ人々の描写も怖い、テレビで放送するべきではないという理由だ。
でもこれは実は嘘らしく、単に視聴率が悪いから放送されないのだと。
たしかに、火垂るの墓は一度は見るべき映画ではあるが、二度と見たくない映画でもある。
戦争の悲惨さ、つらさを目の前につきつけていく話だからだ。
授業とかにして必ず一生に一度見るとすればいいのに。

ちなみに、火垂るの墓の清太を批判する意見が嫌いだ。
清太が叔母の家を出ていく、という判断をしなければ妹の節子は死ななかった、世間知らずでバカなやつだと。
これには一言いいたい。
じゃあお前らは中学生時代、分別のある判断を常に出来ていたのかと。
意味もなく自分が何かすごいことが出来るという自信だけもっている、どうしようもない年ごろだったはずだ。
間違った判断をする清太を止めることが出来ない、その時代のせいなのだ。
清太は悪くない、ただただ子供だっただけだ。

また、はだしのゲンが図書室に置かれなくなったという。
これも残酷描写が問題だと。

あまりに残酷なフィクションは、確かに規制されることも必要だ。
ただ、戦争という実際にあった悲劇を、同じ価値観で規制するのは間違っていると思う。
なぜなら、人の歴史を見ればわかる通り、戦争は必ず再発する人類の病なのだから、それを予防する意識を持つのは必要なことなんだ。

本作、バトル・ロワイアルは中学生が殺し合うというショッキングな内容で、それゆえに映画化された時、国会でも問題になったという異色作だ。
規制すべきフィクションかもしれない。

ただ、自分はそこまでひどい話だとは思っていなかった。
映画化した深作欣二監督は、仁義なき戦いシリーズの監督。
登場人物が中学生になったこと以外、やっていることは仁義なき戦いとあまり変わらない。
エンターテイメント作品だ。
読んだ当初は確か大学生、そのころはあまり感じなかったが、たしかにおじさんになった今、中学生が殺し合うなんて、と心が痛む。

作者がただ殺し合いをエンターテイメントにしたかったのか、殺し合いをさせる政府への批判を通して、政治への懐疑心を国民は持つべきだと主張しているのか、殺し合いという真逆な行為ゆえに命の尊さを気づかせようとしているのか、それはわからない。
年齢、立場によって反応の仕方は違うのであろう。

この本、映画が誰にも見れないものになるのはなんか違うと思う。
でも規制すべきだと思う人がいるのも悪いことではないと思う。
中学生が死ぬのを見たくないという感情は、悪い感情ではないはず。

面白いは面白い作品。

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