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「闇の子供たち」 梁石日

人間が醜い、”悪”の存在である、というテーマアップは色々な創作で取り上げられていると思う。

幽遊白書という漫画にて、かつての霊界探偵「仙水」、彼が闇落ちした理由が人間の醜悪さを集めた霊界の資料を見たためだった。
スレイヤーズというライトノベルでも、登場人物の一人が人間と魔物を合体させるという悪魔的実験を見て、人間の闇に絶望するシーンがある。
その後、彼も闇落ちした。
パトレイバーという漫画でも人身売買カタログを見た登場人物の一人が、「普段は眠っている正義の心が沸き上がってくるだろ?」と言うシーンがあった。

ライトノベルや漫画という媒体だと、そこまで詳細な表記は無くリアルさは薄い。
本筋のスパイスとして利用していて、それだけに焦点をあてて深堀りをしたりはしてない。
青少年向けのメディアでは刺激が強すぎるのだろう。

正面切って描いて、目の前に突き付けてくるの本作。
子供向けの作品では書けない、目を背けたくなる現実。

子供の人身売買の話だ。
舞台はタイ、自分が行った時はそんな闇には気づけなかった。
闇だから隠されているので、それは当たり前だろう。
売買された子供たちの行く末は、児童買春組織や違法な臓器移植業者だ。
その児童買春の様子も詳細に描写されていて、読むのが本当につらい。
この子供たちは一体何のために生まれてきたんだろう。
「俺の生きる意味は何だ?」なんて思春期みたいな疑問を抱くことも無く、身勝手な大人たちに身も心も命も搾取され、この世から消えていく子供。
エイズに感染し、使い物にならないと袋に入れられ捨てられる、なんとか這い出して自分の村に戻るが、感染を恐れる村人に生きたまま焼き殺される。

この子供たちはなんのために生まれてきたんだ。
決して大人たちのおもちゃになって死ぬためじゃないはずだ。
そうじゃなきゃつらすぎる。

こういう自分では解決できない問題に対してどうすればいいのだろうか?
やれることを必死に探して、人生を投げ捨てるまでのことは自分には出来ない。
それは悪?少しでもやれることを探すというのは消極的?
では目をつむって黙っていればいい?
どうすればいいかわからない。。

世界はクソったれなのか。

映画化されているが、見れない。
この話をビジュアルで突き付けられたら心が耐えられる気がしない。

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