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「もっけ」熊倉隆敏

漫画の紹介。
完結している。

妖怪漫画といえば「ゲゲゲの鬼太郎」「どろろんえんまくん」などが浮かぶのだが、古いね。
最近だと妖怪ウォッチが子供たちに人気。
ちょっと内容を調べてみると、現代社会に合わせたコミカルな妖怪がメイン、昔からの妖怪はオールド妖怪という呼ばれ方をされている。
基本的にはコメディだ。
ポケモンの妖怪版だね。

もう今の現代では妖怪はおどろおどろしいものではないのだろう。
そうなった原因はなんだろうか。
かつて昔の人々は、不思議な事象や恐怖というものを妖怪という形で認識していた。
でも今そういった現象はほとんど解明されてしまっているから、妖怪は身近ではなく昔からの伝承という側面しかなくなっちゃったんじゃないかと。
あと暗いニュースも多いし、妖怪より怖いものが増えたんだろうね。
なので、昔は妖怪は人に害をなし、退治されるものとして扱われていたのだが、いま妖怪ウォッチの中ではコメディアンになってしまっている。

そんな中、妖怪を上手に描いたのが本作だと思う。

非常に恐ろしい、”恐怖”というわけでもなく、コメディのいち要素というわけでもなく、なんというか四季折々の風物詩のような描かれ方。
たとえば”雪”ってどうだろう?
雪は寒い、雪だるまや雪合戦など楽しい思い出とも紐づく、雪崩・しもやけ・遭難など大きなマイナスの側面もある、だから”雪”に対して善・悪と分けることはないよね。
”雪”は”雪”、要は人がそれとどう接するか。
本作の妖怪もそのように描かれている。
なので、登場人物を楽しませる時もあれば、恐怖を与えることもある。
時に力をくれる時もあるし、絶望に叩き込むこともある。
そんな善とも悪とも言えない”妖怪”という存在がそこにある、という描かれ方なのだ。

あらすじはこんな感じ。
姉妹がいる。
妹は妖怪にとりつかれやすい体質、見えないが声を聞いたりすることは出来る。
姉はとりつかれないが見ることが出来る体質、”見鬼”というらしい。
二人は都会で両親と過ごしていたのだが、都会は妖怪や怪異がエグい、恐怖部分がより前面に出ている。
その為、田舎に住んでいる祖父母に預けられる。
祖父が拝み屋をやっており、妖怪・怪異との接し方に精通している為、祖父のサポートを受けながらこの能力と共存する方法を学んでいくという話。

時につらい思いをしたり、油断によってひやっとすることが起きたり、特殊な体質な二人が進路になやんだりと、妖怪とともに人として成長していく二人を見ることが出来る。
漫画であれ、人の成長が見れるのは正直嬉しい。

エピソードの中で非常に心に残るシーンがあった。
妹があるとき、怪異に出会った時にたまたま木の枝を持っていた。
その木の枝によって怪異から逃れられたと思った彼女は、枝を杖と思い大事にする。
杖もその思いからか力を持つようになる。
彼女の依存のせいか、杖が彼女にとりついてしまう。
手から離れなくなるのだ。
これを祖父が祓うのだが、その時のシーンが素晴らしい。
祖父は念を込めながら彼女にこう言い聞かすのだ。
「こんなものはただの枝だ、いつか朽ちる。そしてそれは自分も一緒だ。俺もいずれ死ぬ。お前が自分で対処する強さを持たなければいけない」と。
これは妖怪関係なく、人生の教訓ではないだろうか。

とにかく素敵な作品だ。
読んでみて欲しい。

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