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さよならは突然に

愈々今年も暮れていくのであります。
そんな中で今年最後の記事を書くところでありますが今年も例に漏れず仕事納めに民謡を聴き乍ら一杯やっておりました。

赤提灯の下で…

さて長い様で短きは一年の終わりに思う事。
今年も仕事の合間に少しずつ作っていたRPGが一つの區切りをつけたところで今年最後の記事とさせて戴きます。

前回迄で主人公達は得軆の知れない聯中から地元に眠る天然ガスを守った事なりましたが、その正軆を探求すべく遂に房州を出て江戸に向かう事になりました。

遂に物語も時代劇の神髄たる江戸の町が舞台となります。
身支度を整えた主人公達は村を出て江戸に向かおうとしますが…

村から出られず

村の出口で名主と組頭に止められてしまいます。
主人公達は江戸に行こうとする旨を傳えますが…

江戸へ行くには手形が必要

江戸時代は百姓の逃亡を防ぐ為に村を出て他の土地に行くには村長たる名主の發行する道中手形が必要なのです。
しかし、そんな簡單に手形を發行してくれそうにありません。

かの名台詞

なんとか手形をもらいたいので、この「かの有名な國民的RPG」でお馴染みの名台詞で「はい」と言ってくれるまで粘ろうとしますが…

あっさりと魂胆を見破られる始末

「そんな ひどい」の名台詞は破れたり。
主人公達も村の百姓の一人なので名主の立場としても無暗に危險な旅に出す訳にもいかないのです。
そこは腐っても設定は江戸時代。どこへ行くにも「世話人」と「手形」が必要な時代なのです。
房州から出られないのであれば江戸の町で敵の正軆を探る事も叶いません。
そこで主人公が遂に…

記念すべき初台詞

元々村の者ではない流れ者の主人公は單獨で江戸に向かう事を言い出しますが…

RPGの法則が乱れる…!
※有名な音声附きです

遂に主人公は喋ってしまうのです。
この場面で「某大手ハンバーガーチェーン店のコマーシャル」で有名になったあの音声が出てくるのを氣にしてはいけません。

あーあ、しゃべっちゃった!

私の敬愛する「のっぽさん」もそうですが、ゲームの主人公とは基本的に喋らないものなのです。
マリオでもゼルダでもドラクエでも、基本的に主人公自らが台詞を言う事は殆ど皆無と言って良いのが古き良き時代のオヤクソクなのです。
主人公キャラクターとはプレイヤーの分身なので無暗に人格を與えない方が良いと云う考え方があります。
主人公の感情は画面の前のプレイヤーが發しているからなのです。

それで良いのか名主さん

この不測の事態にとうとう名主は主人公が江戸に行く事を許します。

それで良いのか…

主人公の相棒がなんとも微妙な表情をしていますが、兎に角手形を手に入れる事が出來ました。
しかし…

手形の發行理由

手形を發行するには、それなりの理由が必要で當然役所に届け出ないといけないのです。
その理由として「主人公は流れ者の浪人だから村に住まわせるのは負担なので江戸に立ち退きさせる」と云う、あまり有り難くない内容を告げられます。
妙なところが細かい作風ですが、江戸時代の道中手形にはきちんと「旅の目的」を記さなければいけない決まりになっております。
主人公を江戸に行かせる手段として嘘も方便と言いたいところですが…

突然の別れに

手形に記す以上、主人公はあくまでも「立ち退き」と云う扱いになるので手形を使うともう村の住人ではなくなってしまうのです。
名主としても理由も無いのに手形を出す訳にはいかず、苦肉の策と言えるのですが…

女の子は反對します

しかし、これ以外に江戸に行く手段が無いのです。
かと言ってこのまま村に留まっていたのでは話が進みません。
村としても正軆不明の聯中に領内を荒らされるのは望ましくない様です。

仕方無いね

やむを得ず主人公はこの手形を持って村を出て行きます。
主人公が住んでいた村を追い出される事になると云うのは私が御幼少の頃に夢中になった『聖剣伝説2』と云う作品の影響が強く出ています。

(余談ですが、このゲームの主人公のデザインも件のゲームの主人公キャラクターの影響を大なり小なり受けているのです。特に髪型とか…)

最後までついて行こうとする仲間達

主人公以外の仲間は「余所者」でない為、この土地を出る事は出來ません。
農民の離散はこの時代大きな問題となっていたのです。

斯くして主人公は江戸川を越えて江戸の町へ向かうのであります。
尚この江戸川を越える渡船が、かの有名な「矢切の渡し」です。
史實では金町の關所を通る事になるのですがゲーム内では面倒なので渡し舟の形を取る事に致します。

今から6年程前

勿論、現地を取材濟みです。
この取材旅行の記録はいづれ何かの折にと思っております。

渡し場で別れを告げる

ここで主人公は舟で江戸の町に渡り、新たな物語の幕開けとなるのでありますが…

条件クリア

或る一定の条件を満たすと渡河をする前にイベントが起こります。

一緒に居て「面白い」事が幸せだったのです

女の子は主人公と一緒に居たひと時の事を語り出します。

仲良き事は美しき哉

主人公は特別カッコイイ訳でもありません。どこにでもいる普通の人です。
格好つけず當たり前の様に接していただけなのです。

〽好きだよと言えずに初恋は~♪

数多のゲームに出てくる「イケメンでカッコイイ」キャラクターなら幾らでも好意を抱く理由はありますが残念乍らこのゲームの主人公はそう云う人種ではないのです。
歯の浮く様な氣障な台詞も言えなければ24×32マスで表現されたグラフィックでしかないのです。
この主人公は決して所謂「イケメン」な演出をすれば幾らでもモテるキャラクターではないのです。そもそも、そう云う演出など出來る筈が無いのです。
ただ飾らず普通に仲良くしている事が何よりも樂しかった女の子。
この女の子にとって魅力的なのは何よりも主人公が居る事だったのです。
この女の子も所謂「村人A」に過ぎません。よくあるRPGのヒロインの様に「特別な立場」ではないのです。
数多のゲームに出てくる「チャラチャラした装飾品」も無ければ「フリフリでヒラヒラした意匠」も無くミテクレも凡庸です。鳥渡群衆の中に紛れてしまえば決して目立たぬ女の子です。

さあ、どうする主人公?

そう云う訳でありますから、その判断はプレイヤーに委ねられます。
主人公はあくまでもプレイヤーの分身です。この様な判断は分を超します。

ただ折角なので、ここでは一番上の選択肢を選ぶ事に致します。

素直な言葉が一番

こう云うイベントを作る際は經驗が活きます。あれは今から20年程昔の話です。このやりとりもその時のものを引っ張ってきているのです。
むか~し昔の話なので、もう時効です。失恋の数だけネタが出來ると云うものです。かのさくらももこ先生の様に昔の出來事は今を生きる糧なのです。
何事も實物を取材するところから創作は始まります。アタマの中だけで考えるものではないのだと思っています。
残酷な表現ですが現實に裏打ちされていないと所詮は「只の妄想」に終始してしまうからなのです。

この一言は別れる時のもの…

専門的な事はともかく、それなりに人生を經驗している内にその節々で出會った言葉は大事にしておくと何かの約に立つ事もあるのです。

斯くして主人公は仲間と別れを告げて單身江戸の町に向かう事になります。
この時に先程來川岸から二人を眺めている仲間の男の子が後々の伏線になっている事を主人公は未だ知る由もありません。


こうしている内に日附は変わり、愈々大晦日となりました。
静かな年の瀬の夜に思いを馳せると今年も色々な事が起きて様々にそれを愉しんだ事を思い出します。
或いはそれが幸せと云うものかと存じます。
時が過ぎる度にそれもまた増えていく。そして何よりこうして拙い乍らも自身の創作に利用し得るものがどんどん増えていく。
來年もこうした1年になると良いなと思うところにして今年最後の記事を終えるところであります。


皆々様に於かれましては今年一年間多大にお世話になり誠にありがとうございました。
どうぞ良い年をお迎えくだされゝばと存じます。

今年も残すところ24時間を切りました。
それでは來年も何卆よろしくお願い致します。

サヨナラ!サヨナラ!…サヨナラ!!

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